ラーンが遺跡の入り口で深呼吸をする。イシェはいつも通り眉間にしわを寄せて周囲を見回し、テルヘルは影のように彼らに寄り添う。今日の依頼はヴォルダンとの国境に近い遺跡だ。危険度は高いが、報酬も格別だという。
「よし、いくぞ!」
ラーンの豪快な声で三人は遺跡へと足を踏み入れた。内部は薄暗く湿り気が漂い、朽ちた石造りの壁には奇妙な文様があしらわれている。イシェは足元の石を慎重に確かめながら進む。
「ここって、なんか変だぞ」
ラーンの言葉が響き渡る。確かに、いつもとは違う不気味な静けさを感じた。テルヘルは鋭い視線で周囲を見回し、何かを察知したのか、わずかに表情が硬くなる。
「急いで進むな」
彼女は低くつぶやいた。その時、背後から何者かの足音が聞こえた。ラーンが反射的に剣を抜くと、影の中から複数の武装した男たちが現れた。
「待て!」
テルヘルが叫んだが、男たちは容赦なく襲いかかってくる。激しい剣戟が始まった。ラーンの力強い攻撃で敵をなぎ倒していくが、数が多すぎる。イシェは素早い動きで敵の攻撃をかわしながら、隙を突いて反撃する。
テルヘルは冷静に状況を見極めながら、一人の男を取り囲むように立ちふさがった。
「お前たちは何者だ!」
男の一人が声を荒げた。
「ヴォルダンからの使者だ。この遺跡の調査は我々が担当している」
テルヘルの言葉にラーンとイシェが驚愕する。ヴォルダン?なぜこんな場所に?
「何を言ってるんだ!お前たちこそ内通者だろう!」
男の一人が叫び、剣を振り下ろそうとした瞬間、テルヘルが素早く彼の腕をつかんでねじ伏せた。
「内通者?面白い。私は誰にも仕えていない」
彼女は冷たく笑った。男たちの顔には混乱の色が広がる。
その時、遺跡の奥の方から不気味な音が響き渡り始めた。それはまるで獣の咆哮のようだった。ラーンとイシェは背筋が凍りつくような感覚を覚えた。