ラーンが巨大な石の扉を押し開けると、埃っぽい空気が彼らを包んだ。イシェは咳き込みながら、「またこんな薄暗い遺跡なのかい?」と呟いた。ラーンの顔にはいつものようにワクワクした表情が広がっていた。「今回は違うぞ!何か感じるんだ、今回は大穴だ!」
テルヘルは静かに周囲を警戒しながら言った。「内規に従って、まずは安全確認だ。罠の可能性もある」
イシェは懐中電灯で壁を照らしながら、「いつもそう言ってるけど、結局何もないんだよね」とため息をついた。
ラーンは気にせず、興奮気味に石畳の上を進んでいった。「ほら、ここ見て!不思議な模様じゃないか?」
イシェが近づき、模様をよく見ると、「これは…古代ヴォルダンの文字に似ているぞ」と呟いた。テルヘルは眉をひそめた。「ヴォルダン…?まさか…」
その時、床の奥から不気味な音が響き渡った。ラーンは反射的に剣を抜いて構えた。イシェも慌てて後ろに下がり、テルヘルは鋭い眼光で周囲を見回した。
「何だ…?」ラーンの声が震えていた。
床からゆっくりと、黒く禍々しい液体のようなものが湧き上がってきた。「これは…」テルヘルが声を張り上げた。「ヴォルダンの呪文だ!逃げろ!」
三人は慌てて出口へと走り出したが、黒い液体が足元に広がり、ラーンの足を絡め取った。彼は転んでしまう。イシェが手を伸ばしたが、もう届かない。
「ラーン!」
ラーンの叫び声と、黒い液体が発する不気味なざわめきが、遺跡にこだました。テルヘルは後ずさりをしながら、呪文を唱え始めた。
「内規…破るしかないのか…」彼女の瞳に決意の光が宿った。