ラーンがいつものように大口を開けて笑い、「今日はきっと何か見つかるぞ!」と叫んだ時、イシェは眉間にシワを寄せた。「また大穴か? そんな都合の良い話があるわけないだろう」と呟いた。
「ほらほら、イシェ。お前はいつも楽しめないな。せっかくの遺跡探検なのに!」ラーンはそう言うと、軽快に洞窟の中へ足を踏み入れた。イシェはため息をつきながら、ラーンの後を続けた。
彼らは最近、テルヘルという謎めいた女性に雇われて遺跡探索をしていた。テルヘルは高額な報酬を提示する代わりに、発見した遺物の独占権を求める、冷酷で計算高い人物だった。
「今日は何か違う気がする」イシェがそう呟くと、ラーンは振り返り、「なんだ? イシェ、お前もついに大穴に目覚めてきたのか?」と笑った。しかし、イシェの顔色は青ざめていた。「いや…違う。何かがおかしい。この場所…以前来たことがあるような…」
その言葉通り、彼らはすぐに奇妙な光景に遭遇する。壁一面に描かれた不可解な記号、床に散らばる不自然な形をした石、そして空中に漂う微かな光。それはまるで、誰かが意図的に遺跡を改変したかのようだった。
「これは…?」ラーンが戸惑いながら近づくと、イシェは彼の手を強く引いた。「やめろ! ラーン!ここは触るべきではない!」
その時、壁の記号が光り始めた。そして、床に散らばっていた石が回転し始め、奇妙な音を立てて空中に浮かび上がった。ラーンとイシェは恐怖で言葉を失った。
「これは…まさか…」イシェは震える声で呟いた。「テルヘルが言っていた…あの『禁断の場所』のことか?」
ラーンは混乱した表情でイシェを振り返った。「禁断の場所って…?何だそれ?」
イシェは苦い顔で言った。「あの遺跡探検家、テルヘルの目的…それはただの遺物収集じゃない。彼女は何かを探しているんだ…そして、その鍵がここにある…」
その時、彼らの前に現れたのは、テルヘルだった。彼女は冷酷な笑みを浮かべて言った。「やっと見つけ出したわ…私の望むものはここに!」
イシェはラーンに囁いた。「ラーン、あの時テルヘルが言っていた『内緒』のこと…もしかしたら…」
ラーンの目は大きく見開かれた。そして彼はゆっくりと頷いた。
「ああ…そうだったのか…」