ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑っていた。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の肩を叩いた。「また大口叩いてるよ。あの遺跡で財宝が見つかるわけないだろ」。ラーンの目の前で、テルヘルが冷ややかな視線を送る。「今回は違う。この地図は確かなものだ」。テルヘルはテーブルに広げた古い羊皮紙を指差した。「ヴォルダンとの戦いの際に、王家の兵士が使用していたという記録がある。その兵士たちが秘めた財宝の場所を示す地図だと確信している」。ラーンの目が輝き出す。「そうか！ついに俺たちの運命を変える時が来たのか！」イシェはため息をついた。「本当に見つかれば、あのヴォルダンに恩返しできるかもな…」
テルヘルは、ラーンとイシェの反応を冷酷な目で見ていた。彼らは自分の復讐計画の一部に過ぎない駒だ。この遺跡の財宝は、ヴォルダンの軍事力を弱体化させるための資金となる。そして、その情報を握る者は、ヴォルダンに最も近い位置にいることになる。彼女は、この二人が自らの野望を叶えるための道具であることを知っていた。
「よし、準備はいいか？明日、遺跡へと向かうぞ」ラーンの言葉が響き渡る。イシェは小さく頷く。テルヘルは微笑んだ。「では、共犯者よ。運命を変える旅に出かけよう」。彼女の瞳には、冷酷な光が宿っていた。