ラーンの粗雑な剣の一撃が埃を巻き上げ、遺跡の奥深くへと続く通路の入り口を露出させた。「よし、ここだ！」彼の興奮の声は、狭い通路にこだまする。イシェは眉間に皺を寄せながら、懐中電灯の光を壁面に当てた。「本当にここなのか？何か変だな…」彼女は、壁に刻まれた複雑な模様に目を凝らしていた。ラーンは「大穴」への期待で頭がいっぱいだったため、彼女の言葉には耳を傾けず、興奮気味に進むと、テルヘルに言われた通り、奥へ続く階段を見つけた。「ほら！あったぞ！」
イシェはため息をつきながら階段を上り始めた。この遺跡は、いつもとは違う空気を漂わせていた。共有するはずの地図にも記されていない通路や、不自然な石畳の配置…何かがおかしいと感じたのだ。テルヘルも同様に、不吉な予感を感じていた。「早く、遺物を手に入れなければ…」彼女の瞳に映るのは、ヴォルダンへの復讐を果たすための情熱だった。
階段を上りきると、広々とした部屋に出た。中央には、巨大な石棺が安置されていた。ラーンは「ついに大穴だ！」と叫び声を上げたが、イシェの視線は棺に注がれた光に釘付けになった。それは、まるで生きているかのように脈打つ、不気味な光だった。「これは…」彼女は言葉を失った。
その時、石棺の蓋がゆっくりと開かれた。中から立ち上る黒い煙と共に、不気味な声が響き渡った。「お前たち…私の力に飢えている者どもよ…」 ラーンは剣を抜き、テルヘルも手裏剣を構えた。イシェは恐怖を感じながらも、自分の心の奥底にある「何か」を共有するように呼び起こした。それは、仲間を守るために戦うという決意だった。この遺跡で何が起きるのか、誰も知らない。しかし、彼らはもう後には引けない。