ビレーの朝はいつも薄霧に包まれていた。ラーンが目を覚ますと、イシェはすでに朝食の準備をしていた。
「今日はあの遺跡だな。テルヘルが地図を示した場所だ」
イシェは淡々と話した。ラーンの顔には期待の色が浮かんだ。
「よし!ついに大穴が見つかるかもしれない!」
いつも通りのラーンの豪語に、イシェは苦笑するだけだった。彼らは小さな部屋で簡単な朝食を済ませ、テルヘルが待つ場所に急いだ。
遺跡の入り口は崩れかけていて、薄暗い空気が漂っていた。テルヘルは地図を広げ、複雑な模様を指さした。
「ここだ。この遺跡には古代の技術が眠っているらしい。共振現象を起こす装置があると噂されている」
テルヘルは冷めた声で言った。ラーンの心は高鳴り、イシェは眉間に皺を寄せる。共振現象とは、遺跡の奥深くに眠るエネルギーが活性化し、周囲に影響を与えるという危険な現象だ。
「準備はいいか?」
テルヘルは鋭い視線で二人を見据えた。ラーンは剣を構え、イシェは小さな道具袋を手にした。三人は遺跡の奥へと進んでいった。
深い闇の中を進むにつれ、不気味な音が聞こえてくる。壁には奇妙な模様が刻まれていて、まるで生きているかのように脈打っているように見えた。ラーンの心は興奮と不安でいっぱいだった。イシェは常に周囲を警戒し、足取りは慎重だ。
そしてついに、彼らは巨大な石の扉の前にたどり着いた。扉には複雑な紋様が刻まれ、その中心部には輝く結晶が埋め込まれている。
「これが共振装置だ」
テルヘルは興奮した様子で言った。ラーンの視線は結晶に釘付けになった。その輝きは、まるで彼の心を呼んでいるようだった。
イシェは不安げな表情を浮かべる。
「何か変だ…」
その時、地面が激しく揺れ始めた。石の扉から不気味な音が響き渡り、結晶が強烈な光を放った。ラーンの意識は一瞬、白く霞んでいった。そして、彼は不思議な感覚に襲われた。まるで自分の体が振動しているような、そして同時に何かと共鳴しているような感覚だ。
「これは…」
イシェの言葉を遮るように、扉が開き始めた。その向こうには、輝く光が渦巻いている空間が広がっていた。ラーンは思わず息をのんだ。