ラーンの豪快な笑い声がビレーの朝霧を切り裂いた。イシェはいつものように眉間にしわを寄せながら、彼の背後で荷物を整理した。「また大穴の話か？ ラーン、あの遺跡で財宝が見つかった話はただの噂だろう」
「でも、イシェ、もし本当だったら！ 俺たちの人生が変わるんだぞ！」ラーンの目は輝き、イシェの言葉は届いていないようだった。
「確かに、ヴォルダンに奪われたものを取り戻すにはお金が必要だ」テルヘルが静かに口を開いた。「だが、噂話に惑わされてはいけない。今回の遺跡は危険だ。特に、あの迷宮のような地下道は…」
ラーンの顔色が少し曇った。「大丈夫だ、テルヘル。俺たちに任せてくれ！」
イシェは小さくため息をつきながら、準備を終えた。「よし、出発だ」
遺跡の入り口は、深い闇の中に吸い込まれるように広がっていた。ラーンは興奮した様子で剣を構え、イシェは慎重に周囲を見回し、テルヘルは地図を広げながら進路を確認した。
地下道は狭く、湿った空気が重くのしかかっていた。壁には奇妙な文様が刻まれており、不気味な光がちらついているように見えた。ラーンの足取りは軽快だったが、イシェは緊張で肩を硬くしていた。
「ここ…何か変だ…」イシェが呟いた。「この気配…まるで生き物がうごめいているようだ」
その時、地面が激しく揺れた。崩れ落ちる石壁の粉塵が三人を覆い隠した。ラーンが立ち上がり、剣を振るった。「何だ！？」
闇の中から、不気味な呻き声が聞こえてきた。イシェは恐怖で言葉を失い、テルヘルは冷静に状況を判断していた。
「これは…罠だ」彼女は剣を抜いて言った。「逃げるのは難しい。戦わなければ…」