ラーンの豪快な笑い声がビレーの狭い路地裏にこだました。「ほら、イシェ!今日も大穴が見つかるぞ!」 彼の目は輝き、荒くれ者のような笑顔を見せる。イシェはため息をつきながら、地図を広げた。「またそんな無茶なことを言わないで。あの遺跡は危険だって聞いたわよ。」
「大丈夫だ、イシェ。俺が守るから。」ラーンは胸を張って宣言する。彼の言葉に、イシェはわずかな安心感を得る。彼は強くて頼りになる存在だが、その不注意さと計画性のなさが心配事でもあった。
テルヘルは二人のやり取りを冷ややかな目で見ていた。彼女の目的は遺跡の遺物ではなく、ヴォルダンへの復讐だった。ラーンとイシェを利用するのは手段の一つに過ぎない。彼女は彼らに報酬を約束し、遺跡の探索を依頼したのだ。
「準備はいいか?」テルヘルが鋭い視線で二人を確認する。「あの遺跡にはヴォルダン派の者も潜入しているという噂だ。警戒を怠るな。」
ラーンの表情が曇った。「ヴォルダンって…」 彼は拳を握り締め、憎しみに似た感情を露わにした。イシェはラーンの反応に驚き、何かを知っているようだと察した。
遺跡への入口は崩れかけており、危険を感じさせる雰囲気だった。内部は暗く湿っていて、不気味な影が揺らめいていた。彼らは慎重に足取りを進め、周囲を見回しながら進んだ。
「あの石碑には何か刻まれている…」イシェが壁に彫られた文字に目を向けると、ラーンも興味を示した。「これは…古代語だ!」 彼は興奮気味に読み解こうとするが、複雑な文字列は彼には理解できない。テルヘルが近づき、鋭い視線で石碑を睨んだ。
「ヴォルダン派のシンボルだ…」彼女は低い声で呟く。「どうやら彼らは遺跡の奥深くにある何かを狙っているようだ。」
その時、背後から不気味な音が響き渡った。ラーンは反射的に剣を抜いて周囲を見回し、イシェは緊張した面持ちでテルヘルに身を寄せた。影の中から、複数の武装した男が現れた。彼らはヴォルダン派のシンボルを刻んだ胸当てを身に着けていた。
「ここは俺たちのものだ。立ち去れ!」ヴォルダン派のリーダーが威嚇する声で言った。ラーンの表情が険しくなり、剣を構えた。「いいか?イシェ、後ろに下がれ!俺は必ず守るから!」