「よし、今日はあの洞窟だな」ラーンが豪快に笑うと、イシェはため息をついた。「またそんな危険な場所? ラーン、あの洞窟には魔物が出ると噂じゃないか」
「大丈夫だ、イシェ。俺たちならなんとかなるさ!」ラーンの言葉に、イシェは苦笑した。いつも通り、彼の計画性はない。だが、彼を止められるわけでもない。
テルヘルが鋭い目で二人を見据えた。「今回は慎重に進もう。あの洞窟には貴重な遺物があると聞き及んでいる。ヴォルダンに奪われる前に手に入れなければならない」
ラーンの目には輝きが宿り、「そうか! 今回は大穴だ!」と叫んだ。イシェは、いつものように呆れたが、彼の熱意に少しだけ心を動かされた。
洞窟の入り口は暗く湿っていた。石畳の上には苔が生え、不気味な影を落とす。ラーンが先頭を切って進み、イシェとテルヘルが後を続いた。
洞窟の中は狭く、天井からは鍾乳石がぶら下がっていた。足元には滑りやすいぬかるみが広がる。「気をつけろ」とテルヘルが警告した。彼女はいつも冷静沈着で、周囲を警戒していた。
すると、奥から獣のような唸り声が聞こえた。ラーンが剣を抜くと、「なんだ! これは!」と驚いた。「魔物だ!」イシェが叫んだ。
巨大な影が洞窟の奥から現れた。鋭い牙と爪を持った獣は、ラーンに向かって襲いかかってきた。ラーンは剣を振り下ろす。激しい戦いが始まった。
イシェはテルヘルに「何か策はないのか?」と尋ねた。テルヘルは冷静に状況を判断し、「あの石柱に炎の矢を撃てば倒せるはずだ」と指示した。イシェは頷き、石柱に向かって炎の矢を放った。矢が石柱に当たり、火花を散らしながら崩れ始めた。
ラーンは獣の攻撃をかわしながら、隙を突いて剣を突き刺した。獣は悲鳴を上げ、倒れた。ラーンの顔には汗が滲んでいたが、彼は満足げに笑った。「やったぜ!」
イシェは胸を撫で下ろした。そして、テルヘルが洞窟奥に進むと、そこには宝箱があった。「ここだ! ヴォルダンに奪われないように、この遺物を手に入れよう」彼女は言った。
宝箱を開けると、中には輝く宝石が詰まっていた。ラーンは目を丸くし、「ついに大穴が見つかった!」と叫んだ。イシェは微笑んだ。彼もまた、少しだけ充足を感じていた。