ビレーの灼熱の日差しが容赦なく照りつける中、ラーンは重たい息を吐きながら錆び付いた剣を地面に突き立てた。目の前には、崩れかけた石造りの入り口。
「ここだな」
イシェが地図を広げると、かすれた文字で書かれた記号と合致した。テルヘルは眉間に皺を寄せながら、入り口の上にある奇妙な模様を凝視していた。
「何か分かるか?」
ラーンの問いかけに、テルヘルは小さく頷いた。
「古代ヴォルダンの紋章だ。危険な場所である可能性が高い」
彼女の瞳には、かつて奪われた故郷の風景が映っているようだった。それは、憎悪と哀しみを孕んだ充血した瞳だった。ラーンはイシェの視線を感じながらも、その言葉に躊躇なく頷いた。
「よし、入ろう」
彼は剣を握りしめ、石畳の上を踏み鳴らした。イシェは彼の後を静かに追うようにして、入り口へと足を踏み入れた。テルヘルは最後の最後まで彼らを振り返りながら、深く吸い込んだ息をゆっくり吐き出した。彼女の胸には、復讐の炎が燃え盛っていた。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。足元の石畳は苔むし、壁には奇妙な模様が刻まれている。ラーンの足取りは軽快だったが、イシェは慎重に一歩ずつ進んでいった。
「ここは一体何だ?」
ラーンが壁の模様を指差すと、テルヘルは顔をしかめた。
「古代ヴォルダン文明の遺跡だ。彼らの知識と技術は、我々には想像を超えている」
彼女の言葉に、ラーンの表情が少し硬くなった。
「何か危険な罠があるんじゃないのか?」
イシェが不安そうに尋ねると、テルヘルは小さく頷いた。
「可能性は高い。だが、我々は目的を達成するためにここに来たのだ」
彼女の瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。
彼らは遺跡の奥へと進んでいく。その道中、ラーンは幾度となく危険な罠を突破し、イシェは冷静な判断力で危機を回避した。テルヘルは彼らの後ろを歩きながら、常に周囲を警戒していた。
そしてついに、彼らは遺跡の中心にたどり着いた。そこは、広大な空間で、天井から光が差し込み、石柱が幾重にも立ち並んでいる。その中心には、巨大な水晶球が浮かんでいた。
「これが、ヴォルダン文明の遺産か…」
ラーンは息を呑んだ。水晶球からは、不思議なエネルギーが放たれており、彼の視界に充血した世界が広がっていくようだった。
「これは、我々が探していたものだ」
テルヘルは水晶球に向かって歩み寄り、手を伸ばそうとしたその時、突然の衝撃が彼女を襲った。壁から伸び出した鋭い岩が彼女の体を貫き、彼女は床に倒れ込んだ。
「テルヘル!」
ラーンが駆け寄ると、彼女は血を吐きながら苦しそうに笑った。
「…私の復讐は、まだ終わっていない…」
彼女の瞳には、燃え尽きる炎と充血した憎しみが宿っていた。そして、その瞳はゆっくりと閉じていった。