「おい、イシェ!あの石柱、触ってみるぞ!」ラーンの声がビレーの遺跡の薄暗い通路にこだました。イシェはため息をつきながら、ラーンの背後からゆっくりとついていった。
「また無茶なことを…。」
ラーンはいつも通り、目の前の利益しか見えていない。だがイシェには、あの石柱が何らかのトリガーになるのではないかと不安がよぎった。彼女はラーンの行動を制止したい衝動を抑えつつ、「慎重に」とだけ口にした。
「あいつは本当に大穴を見つける気があるのか…」テルヘルは影から二人を見下ろしていた。彼女にとって、この遺跡探索は単なる儲け話ではない。ヴォルダンへの復讐を果たすための手段の一つに過ぎなかった。ラーンやイシェを利用するのも、そのための必要悪だ。
ラーンの手が石柱に触れた瞬間、通路の床が轟音と共に崩れ始めた。ラーンとイシェはバランスを崩し、深く暗い穴に落ちていった。テルヘルは一瞬動揺したが、すぐに冷静さを取り戻した。
「想定内の展開だ…」彼女は呟きながら、崩壊する遺跡から足早に後退した。この混乱を利用して、自分だけが目的の遺物を手に入れるチャンス。
一方、ラーンとイシェは落下地点の暗い洞窟に着地した。二人とも無傷だったが、周囲を伺うと、そこは今まで見たことのない広大な空間だった。壁には複雑な模様が刻まれ、中心には巨大な水晶体が輝いていた。
「これは…!」ラーンの目は驚きに輝き、イシェもその光景に言葉を失った。もしかしたら、この遺跡には本当に大穴があるのかもしれない。
テルヘルは洞窟の入り口から姿を現し、二人は彼女の影を背に立ち尽くしていた。水晶体の輝きは、彼らの未来を照らし出すかのように、希望と不安を同時に抱かせていた。