ビレーの朝は冷え込みが厳しかった。ラーンが目を覚ますと、イシェがすでに準備運動をしていた。「今日はあの遺跡だな」「ああ、あれか。テルヘルが調査資料を示してきてた奴だ」ラーンの顔に期待の色が浮かんだ。テルヘルが持ち込んだ資料によると、その遺跡は古代の儀式場跡らしい。
「大穴が見つかるかもしれないぞ!」ラーンは興奮気味に叫んだ。「落ち着いて、ラーン。まだ何もわかってない」イシェは冷静に言ったが、彼女の瞳にもわずかな期待が宿っていた。
テルヘルは遺跡の入り口で彼らを待っていた。いつものように黒装束を身にまとい、鋭い視線で二人を見つめていた。「準備はいいか?」彼女の口調は冷たかった。「よし、行こう!」ラーンの言葉に促され、三人は遺跡へと足を踏み入れた。
遺跡内部は暗く、湿った空気が漂っていた。壁には古代の文字が刻まれており、イシェは慎重に記録を取っていった。進むにつれて、遺跡の中心部へ続く階段が現れた。「ここか」テルヘルが言った。「儀式が行われていた場所だ」階段を上りきると、広大な部屋が広がっていた。中央には円形の石畳があり、その周りに石柱がそびえ立っていた。
「これは…」イシェは息をのんだ。石畳の模様は複雑な図形を成しており、石柱には古代文字が刻まれていた。「何か儀式に使われたものかもしれない」イシェは興奮気味に言った。「そうだな。そして、この遺跡には何かが残されているはずだ」テルヘルは冷たい目で部屋を見渡した。
三人は部屋の中央で立ち止まった。ラーンは剣を握りしめ、イシェは慎重に周囲を警戒していた。テルヘルは石畳に刻まれた模様をじっと見つめていた。「ここだ」彼女は突然言った。「この場所に何かがある」
彼女が指さす方向には何もなかった。しかし、テルヘルは確信したようにその場所を見つめていた。「儀式を解き明かせば、何かが分かるはずだ」彼女は言った。「そして、ヴォルダンへの復讐に近づける」彼女の目は燃えるような光を放っていた。