「よし、今回はあの崩れかけの塔だな」ラーンが、興奮気味に地図を広げた。イシェは眉間に皺を寄せた。「またあそこで大穴を見つけたか? ラーン、あの塔は危険だって何度言ったか!」
ラーンの無茶な行動にいつも振り回されるイシェだったが、彼の熱意には心を打たれるものがあった。特に、僕たちを雇ったテルヘルが提示する報酬額は魅力的だった。あの高額な日当があれば、夢の「大穴」を探す旅に出られるかもしれない。
「今回は違うって! あの塔には古い文献が残ってるらしいんだ。遺跡の謎を解き明かす鍵になるかも!」ラーンの目は輝いていた。「それに、テルヘルが言ってたように、ヴォルダンとの国境に近い場所だから、何か見つかる可能性も高いだろう!」
イシェはため息をついた。「いい加減にしろよ、ラーン。ヴォルダンとは関係ない。僕たちは遺跡探検家なんだ」
だが、彼女の言葉はラーンの耳には届いていないようだった。彼はすでに準備を始めていた。僕は彼を止めようと努めたが、ラーンの熱意とテルヘルの冷酷な命令の前に、結局引きずられる形で塔に向かった。
崩れゆく石畳の道を登っていくにつれ、空気が重くなっていった。塔内部は薄暗く、不気味な静けさに包まれていた。イシェは警戒を強めていたが、ラーンは興奮を抑えきれずに先へ進もうとする。僕たちは彼に注意しながら、慎重に奥へと進んでいった。
塔の最上階には、朽ちた書架が残されていた。ラーンの期待に反し、そこには古い文献などなく、ただの埃っぽい巻物だけがあった。イシェは肩を落とした。「やっぱりダメだったか…」
その時、ラーンが何かを見つけた。壁に埋め込まれた小さな石版だった。彼は興奮気味に石版に触れようとした瞬間、床が崩れ始めた! ラーンと僕、そしてイシェは、悲鳴を上げながら奈落へと落ちていった…。