「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。噂によると、そこには古代の魔導書が眠っているらしい」ラーンの声がビレーの朝の陽光に溶け込んでいく。イシェは眉をひそめた。「また噂話かい？そんなもの信じて遺跡へ入ったら、いつまでも大穴は見つからないぞ」
「いや、今回は違う！あの塔は俺が子供の頃に見た夢に出てきたんだ！きっと何かがあるはずだ！」ラーンの瞳にいつもの光が宿る。イシェはため息をつきながら、剣を腰に締めた。「わかったわかった。夢の導きで財宝が見つかるなら、私も大賛成だ」
テルヘルは二人を見下ろしながら、静かに言った。「夢か。私は現実しか信じない。だが、この塔には何かがある可能性もある。危険も伴うだろうが、我々はリスクを冒す覚悟があるのか？」彼女の瞳には、かつての苦痛と復讐への執念が燃えていた。
崩れかけた石造りの塔は、荒涼とした丘の上に立っていた。入り口付近には、何者かの武器が突き刺さったままになっており、その錆びた刃に絡みつく蔦が、まるで傷跡のように見えた。ラーンは力強く扉を押し開け、薄暗い内部へと足を踏み入れた。イシェは彼の後を追うように塔の中へと入っていき、テルヘルが最後に続く。
石畳の床には、崩れ落ちた瓦礫が散乱し、埃っぽい空気が立ち込めていて、不気味な静寂が広がっていた。壁には、かつての栄華を物語る装飾が残されていたが、今はほとんど失われてしまっている。「ここには何かを感じますね…」ラーンの声がこだました。イシェは、彼の背中に手を当てながら、慎重に周囲を観察した。
突然、床から不規則な音が聞こえた。ラーンとイシェが振り返ると、テルヘルが剣を抜いて警戒していた。「何だ？」ラーンの声は緊張していた。
「静かにしろ！」テルヘルが声を荒げた瞬間、壁の奥から巨大な影が姿を現した。それは、古代の魔物だった。鋭い牙と爪を持ち、その体は傷跡だらけで、まるで戦いの歴史を刻んでいたかのようだった。
ラーンは剣を抜き、イシェもそれに続く。三人は互いに協力しながら、魔物に立ち向かった。激しい戦いの末、ついに魔物を倒すことに成功した。しかし、彼らの勝利は高価なものだった。ラーンの腕には深い傷跡が刻まれ、イシェは足を引きずりながら立ち上がっていた。テルヘルは血まみれの剣を拭きながら、冷酷な表情で言った。「これで、魔導書があるはずだ」
塔の奥深くで、三人は魔導書を発見した。しかし、その瞬間、彼らは新たな脅威に直面する。ヴォルダンの兵士たちが現れ、彼らを包囲したのだ。