「よし、今回はここだな!」ラーンの指が地図に記された遺跡のマークを突いた。イシェは眉間にしわを寄せ、「またあの辺り? あそこは危険だぞ。以前あの洞窟で起きた事故を忘れたのか?」と忠告する。ラーンはイシェの言葉を軽く聞き流して「大丈夫だって!俺が先頭を切って行くからな!」と豪快に笑った。イシェはため息をつきながら、いつも通りラーンの無茶振りに巻き込まれることになるのだろうかと覚悟を決めた。
遺跡の入り口は崩れかけていて、一歩足を踏み入れるだけで石が崩れ落ちそうだった。テルヘルは鋭い視線で周囲を警戒しながら「気をつけろ」と低い声で警告した。ラーンの背中には、以前の遺跡探検で負った傷痕がうっすらと残っていた。イシェは彼の無謀さにいつも不安を感じていたが、彼にはどこか惹かれるものがあった。
洞窟の中は薄暗く、不気味な静けさが支配していた。ラーンが先頭を切って進んでいくと、壁一面に奇妙な模様が描かれていた。イシェは懐中電灯を照らしてよく見ると、「これは…古代の魔術文字だ」と呟いた。テルヘルは眉をひそめて「何か情報を持っているのか?」と問いかけた。イシェは首を振ると、「まだ解読できていない…」と答えた。
彼らは慎重に奥へと進んでいくが、道中、床に仕掛けられた罠が発動し、ラーンは足を取られて転倒した。彼は痛みで顔をしかめながらも立ち上がり、傷ついた腕を握りしめた。「 damn…!」と呟きながら、再び進むことを決意した。イシェは彼の傷を見て、心配そうに声をかけたが、ラーンは「気にすんな、大丈夫だ」と強がるように言った。しかし、イシェはラーンの言葉の背後にある苦しみが伝わってくるような気がした。
やがて彼らは遺跡の中心部へたどり着き、そこには巨大な石棺があった。テルヘルは興奮を抑えきれずに「ここに何かがあるはずだ!」と叫んだ。しかし、石棺を開こうとした瞬間、突然、石棺から黒煙が噴き出した。ラーンは咄嗟にイシェを庇い、その代わりに黒い煙を浴びてしまった。
「ラーン!」イシェが叫ぶと、ラーンの体からはさらに煙が立ち上り、彼は苦しみながら倒れ込んだ。イシェは慌てて駆け寄ると、彼の腕を掴んで必死に呼びかけた。「ラーン!どうか…」と声を震わせた。だが、ラーンの目はもう閉じていて、呼吸も止まっているようだった。
テルヘルは冷静に状況を見極め、「これは呪いだ!」と叫んだ。イシェは絶望感と怒りに駆られた。ラーンの無謀さ、そして自分自身の無力さを恨んだ。しかし、同時に、彼の勇敢さと仲間への情深さに胸を打たれた。
「必ず復讐する…」イシェは静かに誓った。ラーンの遺志を継ぎ、この世界に蔓延る悪と戦うことを決意した。そして、傷痕と共に、ラーンの記憶を胸に刻み続けるだろう。