「よし、今回はあの崩れかけた塔だな」ラーンが拳を握りしめた。「あの塔の奥深くには、古代の剣が眠っているって噂があったんだ!」
イシェは眉間に皺を寄せた。「また噂話に騙されるんじゃないの? ラーン。あの塔は危険だって聞いたわ。特に地下部は崩落寸前らしい」
「大丈夫だ、イシェ。俺たちが行くなら大丈夫だ。ほら、テルヘルさんもいるじゃないか」ラーンは自信満々に言ったが、テルヘルは彼の言葉に反応を示さなかった。彼女の視線は塔の影に潜む何かを捉えているようだった。
「準備はいいか?」テルヘルが口を開いた。「あの塔には罠があるかもしれない。特に地下部は注意が必要だ」
ラーンの軽率な態度とは対照的に、テルヘルは常に慎重だった。それは彼女が持つある秘密と深く関係していた。ヴォルダンに全てを奪われた彼女は復讐のために生きている。その復讐を果たすためには、あらゆる手段を使っても良いと考えていた。そして、ラーンとイシェを利用するのもその一つだった。
「よし、行こう!」ラーンの一声で三人組は塔へと向かった。
崩れかけた石畳の階段を慎重に登っていくと、塔の中ほどまで来たあたりから、不気味な冷気が漂い始めた。壁には奇妙な模様が刻まれており、まるで警告のように見えた。
「ここからは俺たちが先導する」テルヘルが言った。「ラーン、イシェは後ろを固めろ」
テルヘルの指示に従うように、ラーンとイシェは後ろから続くことにした。テルヘルは常に周囲を見回し、何かを探しているようだった。彼女の鋭い視線は、まるで塔の影に潜む敵を探し出そうとしているかのようだった。
地下へと続く階段を降りるにつれ、空気が重くなり、不吉な雰囲気が増していく。石畳の上には、乾いた血痕がところどころに広がっていた。
「ここは一体…」イシェは言葉を失った。ラーンも普段の軽快さはなく、緊張した表情で周囲を警戒していた。
その時、階段の奥から何かの音が聞こえた。それは金属同士がぶつかり合うような、鋭い音だった。
「敵だ!」テルヘルが叫んだ。「準備しろ!」