「おい、イシェ、あれは?」ラーンが指差した先には、苔むした石造りの門があった。奇妙なシンボルが刻まれており、イシェは眉間にしわを寄せた。
「見たこともない記号だ。ここら辺の遺跡で見たことあるか?」
「いや、ないぞ。でも、なんかヴォルダン風の雰囲気だな」
ラーンの言葉にイシェはため息をついた。ラーンはいつもそうだった。危険な場所には必ずヴォルダンと関連付けようとする。それは彼自身の偏見に過ぎないことをイシェは分かっていたが、それを指摘するのも面倒だった。
「まぁ、気にしなくていいんじゃないか? 何か見つかったらラッキーってことで」
テルヘルはそう言って先へと歩を進めた。彼女はいつも冷静で、目的を達成するためには手段を選ばないタイプだ。イシェは彼女の裏側にある何かを知りたいと感じることもあったが、結局は深く踏み込もうとはしなかった。
石門を開けるとそこは暗い通路だった。 Dampな空気とカビの臭いが漂い、足元には滑りやすい苔が生えていた。
「気をつけろよ」
ラーンが先頭を歩き、剣を構えて進んでいく。イシェは彼に続いて慎重に足を進めた。テルヘルは後ろを歩く彼女の背中に視線を向け、何かを計算しているようだった。
通路の奥には広大な石室が広がっていた。壁一面に壁画が描かれており、それはまるでヴォルダンの人々の儀式の様子を描いているように見えた。イシェは背筋がゾッとするような感覚を覚えた。
「ここって…ヴォルダンの遺跡じゃないのか?」
ラーンの言葉にテルヘルは静かに頷いた。
「そうみたいだ。だが、ここはまだ誰も訪れたことがない場所だろう」
イシェは不安な気持ちを抱えながら、石室の中央にある祭壇に向かった。そこには、輝く金色の宝箱が置かれていた。
「 Jackpot! 」
ラーンは大興奮で宝箱を開けようとした。しかし、イシェは彼の腕を掴んだ。
「待て! 何か変だぞ」
イシェの直感がそう告げていた。宝箱には奇妙な魔力が宿っているように感じた。だが、ラーンの興奮を止めることはできなかった。彼はイシェの手を振り払って宝箱を開けた。