ラーンの大笑い声がビレーの朝の静けさを切り裂いた。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の背後で深呼吸をした。「また遺跡で何か見つけたのか?」
「見つけたぞ!今度は古代の剣だ!まるで巨人の骨のように重い!」ラーンが興奮気味に、錆びついた大剣を振るった。イシェは呆れたように言った。「ラーン、その剣、もう腐ってるんじゃないか?それに、偉業を成し遂げた英雄の剣ならもっと輝いてたはずだ」
「そんなこと言わずに、持ち帰りな!いつかこの剣が俺たちの運命を変えてくれるかもしれない!」ラーンの目は夢見るように輝いていた。イシェはため息をつきながら、彼に従うことにした。
テルヘルは、そんなやり取りを冷ややかに見ていた。「偉業への渇望か。愚かな若者たちだ」彼女は自らの目的のため、彼らを使い続ける必要がある。ヴォルダンとの戦いで勝利するためには、あらゆる手段が必要だった。
遺跡から戻ると、ビレーの酒場「荒くれ者の安息」で彼らはいつも通り騒ぎ立てていた。ラーンの剣は、テーブルの上で奇妙な光を放っていた。「これはただの剣じゃないぞ!きっと伝説の英雄、アレスの剣だ!」ラーンは大言壮語を吐き続ける。イシェは肩を落とした。
「アレスの剣ならもっと立派だったはずだ」イシェはつぶやいた。その時、酒場のドアが開き、一人の男が入ってきた。彼は黒曜石の鎧をまとい、鋭い眼光で周囲を見渡した。男がテーブルに近づくと、ラーンの剣に目を止めた。「これは...アレスの剣か?」男の口調は冷酷だった。「お前たちは、偉業を成し遂げようとしているのか?」
ラーンは驚きながらも、男に向かって剣を構えた。「お前は何者だ?この剣をどうするつもりだ?」男は嘲笑した。「偉業とは、その力を真に理解するものだけが成し遂げられる。お前たちにはまだ早すぎる」男はそう言うと、黒曜石の鎧から剣を取り出した。それは、ラーンの剣よりも遥かに大きく、鋭く輝いていた。イシェは恐怖を感じた。彼らの前に立ちはだかる男は、まさに偉業を成し遂げた英雄だったのだ。