「今日はいい感じの場所を見つけたぞ!」
ラーンが興奮気味に言った。イシェは彼の手がかりとなる地図を広げながら眉間にしわを寄せた。
「また、行き当たりばったりか? ラーン、あの遺跡は危険だって聞いたじゃないか。それに、地図見ての通り、食料も水も底をつきそうだぞ。」
「大丈夫だ、イシェ!俺たちならなんとかなるさ。ほら、この宝の地図さ!」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。ラーンが言う宝の地図とは、見慣れない文字で書かれた古い羊皮紙で、どこから入手したのかすらわからないものだった。イシェは、ラーンの楽観的な性格にはいつも振り回されていると感じていた。
「あの…テルヘルさん、どう思いますか?」
イシェはテルヘルに意見を求めた。彼女は冷静に地図を眺め、小さく頷いた。
「危険かもしれない。しかし、見過ごすわけにもいかない。準備を整えよう。」
テルヘルはそう言うと、小さな革の袋から何かを取り出した。それは乾燥した肉と硬いパン、そして小さな水筒だった。イシェが驚いて彼女を見た時、テルヘルは小さく笑った。
「無駄を省き、必要なものだけを持参する。これが私の流儀だ。」
イシェはテルヘルの言葉に深く頷いた。テルヘルにはいつも驚かされることが多かった。彼女は常に最小限の費用で最大限の効果を得る方法を知っていた。まるで節約術の達人だった。イシェ自身も、ラーンの無謀な行動を補いながら、無駄のない生活を送ることには長けていたつもりだったが、テルヘルには到底及ばないと思いを新たにした。
三人は準備を整え、危険な遺跡へと足を踏み入れた。