「よし、今回はあの奥の部屋だ!」
ラーンが興奮気味に地図を広げた。イシェは眉間にしわを寄せながら地図を覗き込んだ。
「またそんな危険な場所? ラーン、あの遺跡は既に何人もの探検隊が挑戦して失敗しているんだよ。しかも、最近では入り口付近で魔物が出没するなんて話も…」
ラーンの目の輝きは揺るぎなかった。「失敗した探検隊は、単に力不足だっただけさ!俺たちにはイシェがいるだろ? 君の頭があれば大丈夫だ!」
イシェはため息をつきながら地図を畳んだ。「いいけど、今回は本当に危険な場所だと覚悟しておいて。もし何かあったら、すぐに引き返しましょう」
テルヘルは静かにその様子を見つめていた。彼女には、この遺跡がヴォルダンとの戦いに繋がる重要な情報を持っているという確信があった。だが、ラーンとイシェが命を落とすようなリスクを冒させるわけにはいかない。
「準備はいいか? すぐに出発だ」
テルヘルの声が響き渡った。ラーンの瞳に躍動する光、イシェの不安げな表情。彼女の心は複雑な思いでいっぱいだった。
遺跡内部は暗く湿っていた。足元を照らすランタンの火が、壁一面に描かれた古びた文字を浮かび上がらせた。
「ここには何か書かれている…でも、よく分からない」
イシェは慎重に壁に触れながら読み解こうとした。ラーンは不耐気に足踏みをしていた。
「早く見つけろよ! 大穴があるのは確かだ!」
彼の言葉にイシェは顔をしかめた。「落ち着いて。焦る必要はない」
その時、突然、奥から不気味な音が聞こえてきた。まるで獣の咆哮のようだった。ラーンは剣を抜き、イシェも daggers を構えた。
「何の音だ…?」
テルヘルは緊張した様子で周囲を見回した。
「魔物だ! 逃げろ!」
ラーンの叫び声が響き渡る中、巨大な影が彼らに襲いかかってきた。
激しい戦いが始まった。ラーンの剣とイシェの daggers が魔物の攻撃をかわす。テルヘルは冷静に状況を判断し、隙を突いて攻撃を加える。
しかし、魔物は強く、次第に3人は追い詰められていく。
「もうダメだ…!」
イシェが絶望的な声で叫んだその時、ラーンが魔物に渾身の力を込めて一撃を放った。魔物は悲鳴を上げ、崩れ落ちた。
3人は息を切らし、互いに顔を見合わせた。
「よかった…生きていた…」
イシェは安堵の表情を見せたが、すぐに眉間にしわを寄せた。
「でも、この遺跡から持ち帰れるものは何もない…」
ラーンの顔色が曇った。
「そうか…結局大穴は見つからなかったのか…」
テルヘルは静かに言った。「今回の探索では収穫がないように見えるかもしれません。しかし、魔物との戦いを経験し、新たな情報を得たことは大きな価値があります。」
イシェはテルヘルの言葉に頷いた。だが、ラーンの心には深い落胆が残っていた。
「値崩れする前に、大穴を見つけないと…」
彼は呟きながら、遺跡から立ち去った。