「おい、イシェ、あの石碑の隙間、ちょっと覗いてみるか?」ラーンが、興奮気味にイシェに話しかけた。
イシェはため息をつきながら、「またそんな危険なことを…」と呟いた。ラーンの提案はいつもこうだ。計画性ゼロで、リスクばかり高い。だが、イシェはラーンの仲間である以上、彼の無謀な行動を止められない。
「ほら、何か見つけたぞ!」ラーンが石碑の隙間から何かを引きずり出した。「これは…!」彼は目を輝かせながら、石碑から取り出した小さな金色の箱を見せた。
イシェは箱を覗き込んだ。「ただの飾り物じゃないか…」と呟いた。箱の中身は、装飾が施された小さな金属製のプレートだった。
「何だそれ?」テルヘルが眉間に皺を寄せながら言った。「宝探しの仕事なのに、こんなつまらないものしか出てこないとは…」
ラーンの顔色が曇った。「いや、これは…」彼は言葉を濁した。「これはきっと何か意味があるはずだ!」
「意味がないものは、価値もない」テルヘルは冷たく言った。「もしこれが本当に貴重な遺物なら、もっと丁寧に扱われているはずだ。偽物か、あるいはただのゴミだ」
ラーンの顔に落胆の色が浮かんだ。イシェは彼を励ますように言った。「まぁ、まだ諦めるには早すぎるんじゃない?もう少し探してみようよ」
だが、テルヘルはすでに立ち上がっていた。「時間無駄だ。私はこの遺跡から離れる。もし何か価値のあるものが見つかったら、連絡しろ。報酬は…大幅に減額するがな」と言い残し、テルヘルは遺跡から出て行った。
イシェはラーンを見つめた。彼の目は、希望を失ったかのように暗かった。「どうする?」とイシェは尋ねた。
ラーンは深く息を吸い込み、小さく頷いた。「もう少し探そう」彼は言った。「必ず何か見つかるはずだ…!」
イシェはラーンの背中を押した。「そうだ、諦めるな…」と呟きながら、二人は再び遺跡の奥へと進んでいった。