「また値上げか…」イシェが唸り声を上げた。ビレーの宿屋の一室、テーブルの上にはラーンが持ってきた酒と乾パンが並んでいた。いつもなら賑やかだったビレーの市場も、最近は物資不足で活気がなく、高額な値付けが目立つようになっていた。
「仕方ないだろ、イシェ」ラーンは豪快に笑って酒を gulp と飲み干した。「遺跡からいい loot が出れば問題ないだろ?いつか俺たちに大穴が転がり込んでくるさ!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの言葉に耳を傾けなかった。最近、ラーンの口癖「いつか大穴」には、どこか虚しさが漂っていたように感じられた。かつては彼の夢と希望に満ちた言葉だったのに、今はまるで呪文のように繰り返されるだけの空虚な言葉に聞こえた。
その時、扉がノックされ、テルヘルが入ってきた。「準備はいいか?」彼女の冷たい視線は二人を刺すように鋭かった。「ヴォルダンへの復讐に必要な情報がある遺跡の情報を得た。今回は特に危険だ。覚悟しているのか?」
ラーンはいつものように笑顔で頷き、イシェも小さく頷いた。
テルヘルが持ち出した地図には、荒廃した遺跡の場所と周辺の地形が詳細に記されていた。値上げの影響で、必要な装備品の購入にも苦労していたが、テルヘルから提示された報酬額は魅力的だった。
「よし、行くぞ!」ラーンは剣を手に取り、イシェも小さな daggers を構えた。
テルヘルの後を歩きながら、イシェは自分の未来について考え込んだ。ラーンの夢に共感する気持ちと同時に、現実的な不安が胸を締め付けていた。遺跡探索で得られる報酬は、値上げによってますます価値が薄れていくように感じられた。