「よし、今日はここだな!」ラーンが目を輝かせ、荒れ果てた遺跡の入り口へと足を踏み入れた。イシェはいつものように眉間にしわを寄せていた。「また行き当たりばったりか?」と呟きながらも、ラーンの後ろをついて行く。
「今日は大穴が見つかる予感がするんだ!」ラーンは胸を張る。「あの古い文献に書いてあった、黄金の宝が眠る場所ってここにあったんだよ!」
イシェは懐疑的な目を向けた。「またあの怪しい本か? ラーン、そんなものに騙されて借金まで重ねて…」
「大丈夫だ! 今回は確信があるんだ。ほら、テルヘルさんも協力してくれるだろう?」ラーンは振り返り、後ろを歩いてくるテルヘルに声をかけた。しかしテルヘルの表情は硬く、視線は遺跡の奥へと向けられていた。
「この遺跡には危険が伴う。慎重に進まなければ」テルヘルは冷静に言った。彼女の目は鋭く、遺跡の壁に刻まれた古びた文字をじっと見つめている。「この記号…ヴォルダンと関係があるかもしれない」
ラーンはそんなことを気にせず、興奮気味に遺跡の中へ入っていった。イシェはため息をつきながら後を追う。テルヘルも静かに足取りを早める。
遺跡の中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。壁には崩れかけた石像が立ち並び、床には苔むした石畳が敷かれている。ラーンの足音だけが響き渡る。
「ここだ!」ラーンが叫び、ある部屋の前に立ち止まった。部屋の奥には、金色に輝く宝箱が置かれていた。
「やった!ついに大穴だ!」ラーンの目は輝き、イシェも思わず息を呑んだ。しかし、テルヘルは顔色を変えて言った。「これは罠だ…」
その時、床から鋭い棘が飛び出してきてラーンを貫いた。ラーンは悲鳴を上げて倒れ、床に血を流す。
「ラーン!」イシェが駆け寄る。ラーンの目は虚ろになっていた。「イシェ…ごめん…借金…返せなかった…」
イシェは絶望的な表情でテルヘルを見た。「これは一体…」
テルヘルは冷静に言った。「ヴォルダンの罠だ。彼らはこの遺跡を使って、私をここに誘い込んだのだ」
イシェは涙を流しながらラーンの遺体に寄り添う。
「あの日、借金取りから逃げるために遺跡へ入った時…ラーンはあの日から…」
テルヘルはゆっくりと剣を抜いた。「ヴォルダンに復讐する。そして、ラーンの借金を返済する」