ラーンの粗雑な足音とイシェの静かなステップ音がビレーの石畳の上で響き渡った。薄暗い路地裏を抜けると、見覚えのある掘立小屋が現れた。そこが彼らの拠点であり、今はテルヘルが借りている借家だ。
「また遅刻か?」
テルヘルはテーブルに置かれた地図を広げながら、眉間にしわを寄せた。ラーンは苦笑しながら椅子に腰掛け、イシェは疲れを滲ませた顔で床に荷物を置いた。
「遺跡の入り口が分からなくてな。あの森の奥だと思ってたんだけど、結局違う場所だったんだ」
ラーンの弁解にテルヘルはため息をつき、地図を指さした。
「ここは以前から調査していた遺跡だ。今回は特に危険だと伝えられている。慎重に進めないと」
イシェは疲れた体を休めながら、テルヘルに尋ねた。
「あの遺跡…一体何があるのですか?」
テルヘルは目を細めて言った。
「ヴォルダンが欲しがっているもの。それが全てだ」
ラーンは剣をテーブルに置くと、無邪気に笑った。
「よし!それなら俺たちの仕事だな!」
イシェはラーンの言葉に呆れたように見送る。
テルヘルは地図を片付け、立ち上がった。
「準備を整えろ。明日の夜中に出発だ」
3人は借家の薄暗い部屋でそれぞれの思いを抱きながら眠りについた。
次の日、ビレーの朝日に照らされ、彼らは遺跡へと向かった。