ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑い声を上げていた。「また大穴が見つかったって話だ！今度はヴォルダンの奴らも手を出してくるんじゃないか？」
イシェは眉間にしわを寄せながら、ラーンの背中に軽く拳骨を落とした。「そんな安易な話じゃないだろう。ヴォルダンはエンノル連合とは違うぞ。あの国が遺跡に手を出すのは、まず考えられない。」
「そうかな？俺にはそう見えないんだけどな」
ラーンはテーブルの上の酒樽を叩き、「あいつらもいつかこの豊かさを欲しがるさ！」と豪語した。イシェはため息をついた。いつも通りラーンの言動は慎重さとかけ離れていた。
「それにしても、あの遺跡って一体何なんだ？」イシェは呟いた。「あの奇妙な光が放たれた時、まるで何かが目を覚ましたみたいだった…」
「そうだな…あの光は確かに凄かった」
ラーンも少しだけ表情が曇った。彼らは数日前、ビレーから少し離れた場所で遺跡を発見した。そこには古代の文明の残骸と、かつて見たこともないような装置があった。そして、その装置が起動した時、不気味な青白い光が空中に広がったのだ。
その時、ラーンは心の中で何かを感じた。それは強烈な警告ではなく、むしろ呼びかけのようなものだった。「俺たちの世界を変える何か」
その時、テルヘルが現れた。「二人とも、次の仕事だ」と彼女は冷酷に告げた。「ヴォルダンから依頼が入った。あの遺跡のことだ…」
ラーンは驚いた。「ヴォルダン？なぜ？」
「詳しいことは言えない」テルヘルは目を細めた。「ただ、あの遺跡に関する情報を得るためには、彼らが必要なんだ。そして、その代償として、お前たちは何かを手に入れることになるだろう」
イシェは不安げに言った。「何の代償…？」
テルヘルは何も答えず、二人に冷たい視線を向けた。「さあ、行くぞ。あの光は、俺たちに何かを告げている…」
ラーンの心には、不安と期待が入り混じっていた。彼はテルヘルの言葉の意味を理解できなかったが、あの遺跡から発せられた光に導かれるように、運命の歯車に巻き込まれていくのを感じた。そして、彼が無意識のうちに抱いていた「借り」の影が、彼らをゆっくりと闇へと誘っていくのだった。