「よし、今回はあの遺跡の奥深くまで行ってみよう！」ラーンは目を輝かせた。イシェはため息をついた。「またそんな大風呂敷広げないでよ。あの遺跡は危険だって聞いたじゃないか。何よりも、あの奥深くには何もないって噂だし」
ラーンの無茶な提案にイシェはいつも通り冷静に対抗する。しかし、ラーンは聞き耳を持たない。彼はテルヘルからもらった地図を指さし、「ここだ！必ず何かあるはずだ！」と熱く語っていた。テルヘルは冷静に二人の様子を見つめていた。「彼らには、あの遺跡の奥深くに眠るものが見つかるという確信があるようだ」と彼女は呟いた。
実際、テルヘルもあの遺跡に強い関心を抱いていた。それは単なる財宝を求めるためではない。ヴォルダンとの戦いに必要な情報がそこにあると彼女は確信していた。そして、その情報は、ヴォルダンの支配体制を崩壊させる鍵になるかもしれない。
「よし、準備はいいか？行くぞ！」ラーンの叫び声が遺跡の入り口に響き渡る。イシェはため息をつきながら、ラーンの後を追う。テルヘルは二人を見つめ、静かに呟いた。「彼らの無謀さは、ヴォルダンの支配を終わらせるための第一歩になるかもしれない」。
遺跡の奥深くへと続く通路は暗く、湿っていた。壁には謎の文字が刻まれており、不気味な雰囲気に包まれている。ラーンは興奮気味に進んでいくが、イシェは慎重に足取りを確かめる。彼らは罠にかかったり、危険な生物に襲われたりする恐怖を常に抱えている。
そしてついに、遺跡最深部へとたどり着いた。そこは広大な部屋で、中央には巨大な石棺が置かれている。ラーンとイシェは息をのむ。石棺の表面には、複雑な模様が刻まれており、その美しさに圧倒される。
「これは…！」ラーンの声は震えていた。「何かの大発見だ！きっと莫大な財宝が入っているぞ！」彼は興奮して石棺に手を伸ばそうとする。しかし、イシェは彼を制止する。「待て！何か罠があるかもしれない！」
その時、石棺の表面に刻まれた模様が光り始めた。部屋全体が不気味な赤い光に包まれ、壁から奇妙な音が聞こえてくる。ラーンの顔色が悪くなる。「これは…一体…」
その時、石棺の上部が開き、そこから黒い煙が噴き出した。煙の中に、一人の女性の姿が見えた。彼女は漆黒のローブをまとっており、鋭い目つきをしている。
「汝らは誰だ？この遺跡に何しに来た？」女性の言葉は冷酷で、威圧感があった。ラーンとイシェは恐怖で言葉を失った。テルヘルだけが冷静さを保ち、「我々は、ヴォルダンの支配からこの国を解放するためにここに来た」と宣言した。
女性は嘲笑する。「ヴォルダンを倒す？愚かな！その野望は叶わないだろう！」彼女は手元にある杖を高く掲げた。「汝らは今、私の力によって滅ぼされるのだ！」杖の先から黒い光が放たれ、ラーンとイシェに向かって襲いかかる。
その時、テルヘルは自分の剣を抜いた。「我々は決して諦めない！ヴォルダンを倒すために、どんな犠牲も払う覚悟だ！」彼女の瞳には、強い決意が燃えていた。激しい戦いが始まった。
遺跡の奥深くで、三人の運命が交錯する。彼らの戦いを通して、ヴォルダンの支配に終止符を打つための希望の光が、少しずつ輝き始めていく。