ビレーの喧騒を背に、ラーンとイシェは遺跡へと続く獣道を歩んでいた。テルヘルが提示した依頼は「古代の祭壇に刻まれた紋章を解読する」というものだった。危険な遺跡への潜入と引き換えに高額な報酬を得られるという魅力的な話だったが、イシェはどこか不安を感じていた。
「あの紋章、本当に解読できるのか?」
ラーンの軽い口調とは対照的に、イシェの声は硬かった。「テルヘルが言うには、あの紋章には巨大な力の源泉への鍵が隠されているらしい。だが、そんな重要なものをなぜ私たちに任せるんだ?何か裏があるんじゃないか」
「なあ、イシェ、お前いつも心配性すぎだよ」ラーンは豪快に笑った。「こんなチャンス逃すわけにはいかないだろう!それにテルヘルは強いし、あの目は嘘をつかない。大丈夫だ!」
しかし、イシェの不安は的中する。遺跡の奥深くで、彼らは巨大な祭壇とそこに刻まれた複雑な紋章を発見した。だが、その紋章は予想以上に邪悪なエネルギーを放ち、ラーンの攻撃を跳ね返すだけでなく、彼を狂気に陥れた。
「ラーン!」イシェが叫び声を上げようとしたその時、ラーンの目は真っ赤に染まり、剣をイシェに向けて振り上げた。「お前…邪魔だ…」彼の口から発せられた声は、もはや人間のものではない。
イシェは絶望した。ラーンの瞳には、かつての友情の光は消え、代わりに狂気が渦巻いていた。そして、彼女は悟った。テルヘルが欲していたのは、単なる紋章の解読ではなかった。それは、この邪悪なエネルギーを解放し、世界を破滅に導くための鍵だったのだ。
「やめて…ラーン!」
イシェの悲痛な叫びは、空虚な遺跡にこだました。そして、彼女は倒錯の世界へと突き落とされていくのだった。