「よし、準備はいいか?」
ラーンが片手に錆びた剣を持ち、もう片方の手でイシェの肩を叩いた。イシェは眉間に皺を寄せながら、地図を広げて確認していた。
「まだ日も昇りたてなのに、本当にここに遺跡があるのかしら…」
「ああ、テルヘルが言ったんだろ?絶対間違いないって。」
ラーンは自信ありげに笑ったが、イシェはそんな彼をじっと見つめた。
「あの女性のことなら、本当かどうかはともかく、目的のためには手段を選ばないでしょう。特に今回は、ヴォルダンについて何か知りたい様子だったし…」
ラーンの笑顔は少し歪んだ。彼はテルヘルに雇われて遺跡探索をすることに抵抗はないが、彼女が抱える過去と復讐の念を考えると、どこか引け目を感じていた。
「まあ、いいだろう。大穴が見つかるかもしれないし」
イシェは地図を畳んでラーンの背中にたたきつけた。二人は森の中に消えていった。遺跡の入り口は、崩れかけた石造りの階段になっており、薄暗い空気に包まれていた。
「ここが…」
イシェがためらいながら階段を上り始めると、ラーンも後を追った。すると、階段の下から奇妙な音が聞こえた。
「あれは…?」
イシェの声が震える。ラーンは剣を握りしめ、音のする方向へ慎重に近づいた。すると、そこには、巨大な石碑があり、その表面が何かに削られて修正されていた。
石碑の刻まれた文字は、古代の言語で書かれており、ラーンの知識では解読できなかった。しかし、イシェは目を丸くして言った。
「これは…ヴォルダンの歴史を修正する計画に関するものだと…」
ラーンの心は氷のように冷たくなった。テルヘルが求めていたものは遺跡の遺物ではなく、ヴォルダンを滅ぼすための情報だったのだ。そして、その情報は修正された歴史の中に隠されていた。