「準備はいいか？」テルヘルが鋭い視線で二人を見据えた。ラーンはいつものように Carefree な笑顔で頷き、イシェは小さく頷くだけだ。日が昇る少し前にビレーを出発し、目指す遺跡は険しい山道に阻まれていた。
「今回はあの『失われた王墓』を目指すんだ。噂では、そこには王の遺品だけでなく、強力な魔道具が眠っているらしい」テルヘルは地図を広げながら説明した。「だが、同時に危険も高い。過去の探検隊は全員戻ってこなかったという話だ」。ラーンの顔色が一瞬曇る。イシェは冷静に「情報収集は十分にしているのか？」と尋ねた。
テルヘルは少し不機嫌な顔で「もちろんだ。ただし、遺跡の内部構造や罠に関する情報は限られている」と答えた。
山道を登り続けるにつれて、空気が冷たくなっていった。ラーンの軽快な足取りとは対照的に、イシェは慎重に足を踏みしめている。テルヘルは後ろから二人を見下ろしながら、何かを思案しているようだった。
「あの遺跡には、ヴォルダンが関与したという噂もある」テルヘルが呟いた。「もし本当なら、そこに眠るものは単なる財宝ではない可能性がある。我々がそれを手に入れることは、ヴォルダンへの復讐にもつながるだろう」。
ラーンの表情は硬くなる。イシェも静かに頷き、自分の信条を思い出した。彼らにはそれぞれの理由で遺跡を探検する。だが、今この瞬間、彼らの前に広がるのは、単なる冒険ではなく、運命の歯車が動き出す予兆だった。