ラーンの大 hammer が、埃まみれの石壁を打ち砕いた。崩れ落ちる石塵の向こうに広がるのは、意外にも整然とした空間だった。
「よし、ここだ！」
ラーンが興奮気味に叫ぶ。イシェは眉間に皺を寄せながら、周囲を見回した。壁には幾何学模様が刻まれており、中央には祭壇のような石造りの台座がある。空気が重く、静まり返っていた。
「何か感じる…不気味だ」
イシェの言葉にラーンは苦笑いした。「そんなことないよ。ほら、宝探しの醍醐味だろ？」
彼は台座に手を伸ばそうとした瞬間、テルヘルが制止する。
「待て。ここは聖域かもしれない。」
彼女の瞳は鋭く輝き、壁の模様を注視している。イシェもテルヘルの言葉を聞いて、改めて壁画をよく見てみる。複雑な模様の中に、人々が祈りを捧げる様子や、神々のような存在の姿が描かれていることに気づいた。
「信仰…か」
イシェは呟いた。「ここには何か祀られていたのかもしれない…」
ラーンの顔色が曇った。「宝がないってわけじゃないだろう？」
テルヘルは冷静に言った。「ここは遺跡を調査する目的で雇われている。宗教的な意味合いを考える必要はない。だが、もし何か危険な仕掛けが…。」
彼女の言葉は途絶えた。突然、床の石畳から光が立ち上り、部屋全体を照らした。祭壇の上には、今までなかった光る球体が浮かんでいた。球体はゆっくりと回転し、不思議な模様を映し出している。ラーンは目を丸くした。
「な、なんだあれは…？」
イシェも言葉を失った。球体からは温かい光が流れ出ており、まるで生命を持つように脈打っているかのようだ。テルヘルは静かに剣を抜いた。
「警戒しろ。何者かが…」
その時、球体が突然割れ、部屋中に白い粉が降り注いだ。ラーンの視界が白く霞む中、かすかに聞き取れたのは、遠くで響き渡る鐘の音だった。