ラーンの豪快な笑い声が、遺跡の奥深くまでこだました。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の後ろから続く。埃っぽい空気と、湿った土の臭いが nostrils を刺激する。
「本当にここに入るか? ラーン。」イシェの声がかすれていた。「この道、見たことないぞ。地図にも載ってないし…」
「大丈夫だ、イシェ! 冒険だと思って楽しめよ!」
ラーンの言葉は自信に満ちていたが、イシェには不安でいっぱいだった。彼らはテルヘルから依頼を受けて、この遺跡を探していた。彼女はヴォルダンに関する何らかの情報があると信じ、そのために危険な場所にも果敢に挑戦する。
「ほら、何か見つけたぞ!」ラーンが興奮気味に叫んだ。彼の指さす先には、崩れかけた壁に奇妙な模様が刻まれていた。イシェは近づいてよく見ると、それは複雑な記号で構成された古代文字だった。
「これは…」イシェの視線が、壁の奥にある小さな部屋へと向けられた。そこには、薄暗い光を放つ水晶の球体が鎮座していた。その球体は、まるで生きているかのように脈打っているようだった。
その時、背後から冷たい声が響いた。「なかなかいいものを見つけたな。」
イシェが振り向くと、テルヘルが立っていた。彼女の表情は冷酷で、鋭い眼光をラーンとイシェに向けさせている。
「あの球体…何だ?」ラーンの問いかけに、テルヘルは少しの間沈黙し、ゆっくりと口を開いた。「それは、かつてこの地に暮らした人々の記憶を封じ込めたものだ。ヴォルダンに奪われた、私の大切な…」彼女の言葉は途絶えた。
イシェは、テルヘルの瞳に映る深い悲しみと憎しみに心を痛めた。そして、彼女が何のためにこの球体を手に入れようとしているのか、ほんの少しだけ理解した気がした。
「さあ、ラーン、イシェ。あの球体を手に入れる手助けをしてくれ。」テルヘルはそう言うと、鋭い視線で彼らを睨みつけた。「お前たちの力は必要だ。そして、お前たちにも何かを得るものがあるだろう。」
ラーンの顔には迷いの色が見えたが、イシェは決意を固めた。彼らは、この遺跡の奥底に眠る秘密と、テルヘルの復讐の物語に巻き込まれることになったのだ。