ラーンが巨大な斧を振り下ろすと、埃と石の粉塵が舞い上がった。崩れた壁の向こうから、イシェが「まだあるぞ！」と声を張り上げた。汗だくで息を切らしながらも、ラーンの顔は満面の笑みだった。「よしっ！今日は必ず大穴を開けてやる！」
イシェは眉間に皺を寄せた。「またあの言葉か。本当に財宝が見つかると思ってんの？ そんな甘くないわよ」彼女は小さなランプの明かりを頼りに、崩れた壁の奥を慎重に探っていた。
「あいつらには夢があるんだってな」と背後から声がした。テルヘルが黒曜石のような瞳で二人を見下ろしていた。「それに、夢を見るのも悪くない。現実逃避になるくらいなら」
ラーンの顔色が少し曇った。イシェはテルヘルの言葉に何も言わずに、壁の隙間を指さした。「こっちだ。何かあるかも」
狭い通路を進んでいくと、石畳の床に到達した。壁には複雑な模様が刻まれており、中央には石棺が置かれていた。
「これは...」イシェは息をのんだ。「古代の王家の墓か？」
「王家の墓なら財宝もあるはずだ！」ラーンの目は輝きを放った。「よし！開けてやろうぜ！」
テルヘルが手を上げ、「待て」と制止した。「急いで開けるな。罠があるかもしれない」彼女は石棺に刻まれた模様をじっと見つめた。「これは...ヴォルダンの紋章だ」
ラーンは眉をひそめた。「ヴォルダン？」
「ああ、あの大国だ」テルヘルは冷たく言った。「この遺跡はヴォルダンに奪われたものだ。我々には関係ない」彼女は振り返り、イシェとラーンを見据えた。「だが、私は復讐のためにこの遺跡を手に入れる」
イシェはテルヘルの瞳の奥にある狂気に気づき、背筋が凍りついた。ラーンの顔も蒼白になっていた。
「おい、待てよ！」ラーンの声が震えていた。「一体何が...」
テルヘルは微笑んだ。「何も恐れることはない。お前たちはただの道具にすぎない」と彼女は石棺に向かって手を伸ばした。その瞬間、石棺の表面から赤い光が放たれ、部屋を赤く染めた。