ラーンの大げさな声で遺跡の入り口が告げられた。イシェはいつものように眉間に皺を寄せていた。「本当にここなのか？ いつもより臭いがきついぞ」と彼女は呟く。
「大丈夫だ、大丈夫！ この洞窟の奥には必ず何かがあるはずだ！」ラーンの自信に満ちた言葉だったが、イシェには虚しさが感じられた。最近、ラーンの「大穴」への執着は日に日に強くなり、そのせいで遺跡探索の目的を見失っているように思えた。
テルヘルは背筋を伸ばし、鋭い視線で周囲を警戒していた。「迷宮のような構造だ。慎重に進もう。」彼女の言葉にラーンとイシェが頷き、三人は洞窟へと足を踏み入れた。
洞窟内は暗く湿り気があり、不気味な沈黙が漂っていた。時折、足元を這う虫のざわめきだけが耳をつんざく。彼らは慎重に進むにつれて、壁に刻まれた奇妙な文様や、朽ち果てた石像に出くわした。
「これは…？」イシェは指で石像の表面を撫でながら呟いた。「まるで古代の文字のようだが…」
ラーンは興味なさげに言った。「価値のあるものならいいんだろ？ 早く財宝を見つけたいぜ！」
テルヘルの表情が曇った。「この遺跡には何か特別な力があるかもしれない。安易に手を出すのは危険だ。」
彼女の言葉は無視され、ラーンは石像の近くにある小さな箱を開けようと手を伸ばした。その時、洞窟の奥から不気味な光が差し込んだ。三人は振り返ると、そこには巨大な扉が開かれ、その向こうから漆黒の影がゆっくりと現れてきた。
「何だ…これは…！」ラーンの顔色が青ざめた。イシェは恐怖で言葉を失い、テルヘルだけが冷静さを保っていた。「逃げろ！ それは価値のあるものとは違う。」
影はゆっくりと近づき、三人に迫ってきた。その瞬間、ラーンは恐怖に駆られて石像を蹴飛ばした。石像は崩れ落ち、その中から小さな宝石が散らばった。
「おい、これは…！？」ラーンの目は宝石に釘付けになった。
しかし、影は宝石を無視し、三人にゆっくりと近づいてきた。影の正体は巨大な怪物だった。
「逃げるんだ！」テルヘルが叫び、三人は必死に洞窟から逃げ出した。