「よし、行こう!」ラーンの豪快な声は、ビレーの朝霧を切り裂いた。イシェがため息をつきながら背後についていく。今日も遺跡探索だ。彼らの目の前に広がるのは、緑に覆われた丘陵地帯と、その頂上にそびえ立つ古代の石造りの塔。
「あの塔だよな。テルヘルが言うには、そこにはかつて王族が眠る墓があるらしい」ラーンは目を輝かせながら言った。「宝の山だぞ!」イシェは彼の無邪気さに苦笑する。「また夢を語っているのかい?そんな伝説を鵜呑みにするなよ」。しかし、イシェ自身も、あの塔の遺跡に眠る秘密への期待を禁じえなかった。
テルヘルは、いつも通り冷静に指示を出す。「まずは塔の周囲を調査し、罠がないか確認だ。そして、内部構造を把握するように」。彼女は鋭い目で遺跡を見回し、何かを感じ取っているようだった。
三人は慎重に塔へと近づき始めた。しかし、その途中、イシェが何かに気づいた。「待て、ラーン!」イシェの言葉は急いでいた。「あの影…」。ラーンの視線もそれに従うと、遠くの林の中に黒い影が動いているのが見えた。
「ヴォルダンの兵士だ!」テルヘルが声を張り上げた。「まさかこんな場所に…」ラーンが剣を抜き出すと、イシェもすぐに後を追った。三人は急いで塔に避難するよう促したが、影はすでに彼らに向かって襲いかかっていた。
激しい戦いが始まった。ラーンの剣は鋭く、イシェの動きは素早かった。しかし、相手は訓練された兵士たちで、人数も多かった。テルヘルは冷静さを保ちながら、隙をついて敵を倒していく。だが、状況は悪化するばかりだった。
その時、突然、空から轟音が響き渡った。塔の上部が崩れ始め、瓦礫が三人に降り注いだ。ラーンはイシェを庇い、テルヘルは近くの岩陰に身を隠した。
瓦礫が落ち止んだ後、三人は息を切らしながら立ち上がった。塔の上部は完全に崩壊し、内部への道は塞がれていた。そして、影の兵士たちも姿を消していた。
「一体何が…?」ラーンが言葉を失った。イシェも同様に混乱していた。その時、テルヘルが何かを見つけた。「あれは…」彼女は瓦礫の中から光るものを拾い上げた。それは、小さな金色のプレートだった。
プレートには、複雑な模様と、一人の人物が描かれていた。そして、その人物の足元に、「使節」という文字が刻まれていた。
三人は互いに顔を見合わせた。この遺跡の秘密、そしてヴォルダン兵士たちの目的とは一体何なのか?謎は深まるばかりだった。