「よし、今回はあの崩れかけた塔だ」ラーンが地図を広げ、指を置いたのはビレーの北西にある、危険区域とされる場所だった。イシェは眉間にしわを寄せた。「またか、ラーン。あの塔は以前にも言っただろう？危険すぎるぞ。何よりも遺跡探査許可証がないのに…」
「大丈夫、大丈夫！今回はテルヘルが来てくれるんだから」ラーンは自信満々に笑った。テルヘルの後ろには常に影のような存在感があり、イシェはいつもその視線に背筋を凍らせていた。
テルヘルは静かに口を開いた。「許可証は必要ない。私は手段を講じる。」彼女の言葉は冷たく、どこか不気味な響きがあった。イシェは不安を覚えたが、ラーンの熱意とテルヘルの確信に押されて、結局は塔へ向かうことになった。
塔の内部は崩れかかっており、危険な場所だったが、ラーンはまるで楽しげに進んでいった。イシェは慎重に足取りを確かめながら、彼の後を追いかけた。
「ほら！何かあるぞ！」ラーンの声がした。彼は壁の一部をこじ開け、中から小さな箱を取り出した。箱を開けると、そこには輝く宝石が詰められていた。
「やったぜ！」ラーンは大喜びで拳を突き上げた。イシェも思わず息をのんだ。しかし、その瞬間、塔の奥の方から不気味な音が聞こえてきた。
「何かいるぞ！」テルヘルが剣を抜いた。「この遺跡は使役されたようだ」彼女は冷たく言った。「気をつけろ」。
影が壁に映り、床が震えた。ラーンの笑顔は消え、イシェは恐怖で体が硬直した。彼らは使役の対象となったのだ。