「おい、イシェ、今日の遺跡はここだな?」ラーンが地図を広げ、指差した場所はビレーから南へ3日の道のり。イシェは眉間にしわを寄せた。「また危険な場所かい?あの辺はヴォルダン軍の哨戒が強化されてるって聞いたぞ」
「大丈夫だ!俺たちならなんとかなるさ!」ラーンは豪快に笑った。
テルヘルは冷静に言った。「今回は慎重に進もう。ヴォルダンとの接触は避けたい。目的達成には遺跡の情報が不可欠だ。」
イシェはテルヘルの言葉を聞いて少し安心した。最近、ラーンの無計画さにイライラすることが増えている。テルヘルは冷酷だが、目的を達成するために必要な判断ができる。彼らに頼るしかなく、イシェ自身もどこかで希望を託していた。
遺跡の入り口には崩れかけた石碑が立っていた。刻まれた文字は古代語で、イシェは薄汚れた書物から解読を試みた。「ここはかつて…」イシェは声を詰まらせた。「ここはかつてヴォルダン帝国の一部だった…。」
ラーンは驚いた。「そうか、だからヴォルダン軍が哨戒してるんだな。ということは…」
「遺跡の中にはヴォルダンの秘密兵器や記録が残されている可能性が高い」テルヘルが言った。「我々の目的は、その情報を手に入れることだ。そしてヴォルダンに復讐を果たすための情報を得ることだ。」
イシェは息を呑んだ。テルヘルの言葉に、冷酷なだけでなく、深い憎悪を感じた。彼女自身もヴォルダンに大切なものを奪われたことがある。しかし、復讐よりも、今は安全に生き延びたいという気持ちが強かった。
彼らは慎重に遺跡の中へ足を踏み入れた。暗闇の中に広がる遺跡の内部は、まるで巨大な迷宮のようだった。壁には奇妙な模様が刻まれており、床には古代の兵器が散らばっていた。
ラーンは興奮気味に剣を振るい、「ここは宝の山だ!きっと大穴が見つかるぞ!」と叫んだ。
イシェはラーンの背後から「気をつけろ!」と叫んだ。後ろから影が迫ってきたのだ。
ラーンの剣が光り、影を斬り裂いた。影からは獣のような咆哮が聞こえた。遺跡の奥深くには、ヴォルダン帝国が残した恐るべき存在が眠っていたのだ…。