「待てラーン、あの石畳には何か刻まれてるぞ」イシェがラーンの腕をつかんだ。彼はいつも通り、興奮して遺跡の奥へと進んでいく。
「またそんな細かいことにこだわるな。早く大穴を見つけたいんだ！」ラーンはイシェの手を振りほどき、先に進む。彼の足音は石畳の上で響き渡り、イシェの心を騒がせた。
テルヘルは背後で静かに彼らを眺めていた。彼女の鋭い目は、遺跡の壁に刻まれた紋章をじっと見つめていた。ヴォルダンの人々が残した記号だ。復讐のためには、これらの意味を解明しなければならない。
「よし、ここだ！」ラーンの声が響き渡る。彼は石の扉の前に立っていた。扉の上には、複雑な模様が刻まれていた。イシェは眉をひそめた。「あの記号…見たことがあるような…」
「どうでもいい！開けろラーン！」テルヘルがそう叫んだ。ラーンは力任せに扉を押したが、 budge しなかった。イシェは冷静に扉の模様を見つめ、手を伸ばした。
「待て、イシェ。そんなことをしたら」ラーンの言葉は途絶えた。イシェの手が扉の模様に触れた瞬間、石畳から光が放たれ、部屋を照らした。扉には複雑な図形が浮かび上がり、その中心に、まるで生きているかのように脈打つ赤い宝石があった。
「これは…」テルヘルは息をのんだ。宝石の輝きは、彼女をかつてヴォルダンで目にした光景へと引き戻した。忘れようとしても消えないあの日の記憶。憎しみが彼女の胸を締め付ける。
ラーンは宝石に目を奪われたまま、「大穴だ！ついに大穴を見つけた！」と叫んだ。イシェは静かに彼を見る。「ラーン、これはただの宝石じゃない。何か別のもの…何か大切なものを感じる」
テルヘルは宝石の輝きに心を奪われながらも、冷静さを保った。「この遺跡には、ヴォルダンの秘密が隠されている。この宝石こそ、その鍵かもしれない…」彼女はイシェと目を合わせ、「我々は、この宝石を手に入れる必要がある」と静かに言った。