ラーンの大斧が石壁を叩き割り、埃が舞った。イシェが咳払いしながら「また無駄な作業だな。あの奥の通路は崩落してるだろう」と呟くと、ラーンは「いや、ほら！見てみろ！」と興奮気味に指差した。
確かに、崩れた壁の隙間から薄暗い光が漏れていた。「よし！宝だ！」ラーンの目は輝き、イシェはため息をついた。
テルヘルは冷静に状況を分析していた。「あの光は自然光ではない。何らかの仕掛けがある可能性が高い」と告げると、ラーンは「そんなことより、早く中に入ろうぜ！」とばかりに壁の残骸を押し始めた。イシェがテルヘルの指示に従い、周囲を警戒しながら、ゆっくりと進む。
狭い通路を進んでいくうちに、冷たい風が吹き始め、石畳の上には奇妙な模様が刻まれていた。「これは...」イシェは言葉を失った。複雑な幾何学模様は、どこかで見たことがあるような、しかし同時に見覚えのないものだった。
そして、通路の先に広がっていたのは、巨大な地下空間だった。天井から伸びる柱、壁一面に描かれた古代文字、中央には光り輝く水晶球が鎮座している。まさに失われた文明の遺跡だった。
「わあ...」ラーンは目を丸くし、イシェも言葉を失った。テルヘルだけが冷静さを保ち、水晶球に近づいていく。「これは...ヴォルダンが探し求めていたものかもしれない」と呟いた。
その時、壁から鋭い音が響き渡り、床に埋め込まれた石版が次々と発光し始めた。イシェは「何か起こるぞ！」と叫び、ラーンも慌てて剣を抜いた。水晶球の光が強くなり、空間全体を照らし出すと同時に、壁から巨大な影が現れた。
それは、まるで石像のような怪物だった。その目は赤い光を放ち、鋭い牙を剥き出しにして、3人をじっと見つめていた。ラーンは剣を構え、イシェは後ろに下がった。テルヘルは水晶球の方へ視線を向け、「これは...作業の始まりだ」と呟いた。