ラーンが巨大な石扉の前に立ち尽くしていた。イシェが後ろでため息をついた。「またか?」
「いや、今回は違う!見てみろよ、この彫刻!」ラーンの指が扉に刻まれた複雑な模様を追いかけた。「これは明らかに…古代ヴォルダン文明の記号だ!」
イシェは眉をひそめた。「そんな証拠はどこにもない。それにヴォルダン文明は遺跡の奥深くで発見されたものだし…」
「でも、もしかしたら!この遺跡はヴォルダンのものだったのかもな!」ラーンの目は輝いていた。「ほら、テルヘルも言ってたじゃないか?ヴォルダンにはまだ知られていない遺跡があるって!」
イシェはため息をついた。ラーンの妄想は尽きなかった。テルヘルが「ヴォルダンに復讐するため」と口にする目的はあくまで言葉巧みに彼らを操るための手段に過ぎないという事実は、ラーンには理解できないようだ。
「よし!開けろ!」ラーンは力任せに石扉を押し始めた。イシェは諦めたように肩をすくめた。「また無駄な努力だな…」
しかし、予想外のことに扉がわずかに動き出した。ラーンの顔は喜びで輝き、イシェも思わず息をのんだ。扉の隙間から差し込む光は、遺跡の奥底に眠る未知なる世界を予感させた。
「やった!大穴だ!」ラーンは叫びながら扉を押し続けた。イシェは彼を見つめ、胸の高鳴りを抑えきれなかった。もしかしたら、本当に何か大きなものが見つかるかもしれない。
その時、背後から冷酷な声が響いた。「待て。」テルヘルが彼らの前に立ちはだかり、鋭い目で石扉を睨んでいた。「この遺跡は私が調査する。お前たちは邪魔だ。」
ラーンの顔色が変わった。「おい、テルヘル!俺たちと約束しただろ?遺物を分け合うって!」
テルヘルは冷たく笑った。「約束?そんなものはいつでも破られるものよ。特に、目的達成のために必要な時にはなおさらだ。」彼女は剣を抜き、ラーンとイシェをにらんだ。「ここは私のものだ。後は何も言わずに消えてくれ。」