ラーンが巨大な石の扉を押し開けたとき、埃っぽい風が吹き荒れた。イシェは咳払いしながら、鼻をつまんで「またしても大げさな仕掛けか」とぼやく。扉の先には広がる部屋に、幾つもの石棺が整然と並んでいた。
「まさか、こんなところに…」ラーンの目は輝き、興奮気味に棺の一つに手を伸ばした。イシェは冷静に周囲を警戒し、足元を注意深く確認した。「待てよ、何か変だぞ」と呟き、ラーンの動きを制止した。その時、地面が激しく揺れた。石棺から塵埃が舞い上がり、天井からは小石が崩れ落ちてきた。「これは…」イシェは顔面蒼白になりながら、背後から聞こえる轟音に耳を傾けた。「余震だ！」
ラーンは一瞬呆然とした後、慌ててイシェの手を引いて部屋の外へ駆け出した。出口まであと少しというその時、再び激しい揺れが襲い、壁が崩れ落ち始めた。二人は必死に走り続け、何とか出口にたどり着いた。振り返ると、遺跡の入り口は完全に封鎖され、石塵が立ち込めていた。
「無事だったな…」ラーンが安堵のため息をつくと、イシェは彼の肩を叩き、厳しい表情で言った。「これで終わりじゃない。あの震度は、この遺跡全体に影響を与えている可能性がある」テルヘルがどこにいるのか、彼女の目的は何か、そしてヴォルダンとの関係は…頭の中を駆け巡る疑問の数々。イシェは小さくため息をついた。
「次の余震はいつ来るか分からない…」