ラーンの大 swing が埃を巻き上げ、薄暗い遺跡の奥底にある石棺を割った。その瞬間、イシェは背筋が凍りつくのを感じた。石棺から溢れ出すのは、金銀財宝ではなく、腐敗した獣の臭気だった。
「ひっ！」ラーンが思わず後ずさりする。イシェも慌てて彼の手を掴み、石棺から離れた。
「なんだよ、これは…」ラーンの顔色は青ざめていた。「大穴じゃないかよ」
イシェは、彼の肩越しに見えた石棺の中を確認した。そこには、腐った肉片が散らばり、骨と化す獣の骸がうずくまっていた。その目は空洞に開き、まるで生き物をじっと見つめているようだった。
「何か…いる」イシェの声は震えていた。「何かが…」
その時、石棺から黒い煙が立ち上り始めた。煙が渦を巻き、天井に広がり、やがて部屋全体を覆った。ラーンとイシェは咳き込みながら、お互いの顔を見合わせた。恐怖が二人を包み込む。
「テルヘル…」ラーンの声はかすれていた。「テルヘルはどこだ？」
しかし、返事はなかった。煙が濃くなるにつれ、視界は奪われ、呼吸は苦しくなった。イシェは必死にラーンの手を掴み、彼と共に出口を目指した。
だが、出口は遠かった。煙の中を進むにつれて、イシェの足元は重くなり、まるで泥に足を取られているようだった。
「ラーン…」イシェが叫んだ。「もう…無理…」
その時、ラーンの腕がイシェを抱きしめ、力強く前に押し出した。
「大丈夫だ」ラーンの声がかすれていた。「俺がいるから…」
イシェは彼の言葉に少しだけ安心した。だが、次の瞬間、ラーンの体が崩れ落ちた。煙の中に吸い込まれるように、彼の姿は見えなくなった。
イシェは絶望した。ラーンが…死んだのか？
その時、目の前で黒い煙が渦を巻き、一つの形を作り始めた。それは、獣の骸から生まれた grotesquely な存在だった。その目は空洞に開き、イシェをじっと見つめていた。
「余生…」獣のような声が響き渡った。「お前たちの余生は俺のものだ」