「よし、今回はあの崩れかけた塔だな」。ラーンが地図を広げ、指を走らせた。イシェは眉間に皺を寄せた。「また危険な場所かい？ 以前のあの洞窟みたいに、 Collapse riskレベル4って書いてあるよ」。ラーンの顔は曇り、「おいおい、そんなことより、今回はテルヘルが報酬を倍増してくれたんだぞ！ あれだけの金額なら、多少の危険も承知の上だ」。イシェはため息をつきながら、準備を始めた。
テルヘルはいつも通り、冷静沈着に地図を睨んでいた。彼女の目的は遺跡探索そのものよりも、ヴォルダンに隠された何かを探し出すことだった。 報酬を払うのも、ラーンとイシェの力を借りるのも、全てそのための手段だ。彼女は自分の中の怒りと憎しみを制御しながら、淡々と計画を進めていた。
ビレーを出発した三人は、荒れ果てた道を進むうちに、ヴォルダンの影を感じ始めた。辺境にまでその存在が及んでいることに、イシェは不吉な予感を持った。
遺跡の入り口に差し掛かった時、ラーンは興奮気味に言った。「よし、準備はいいか？ 大穴が見つかるぞ！」 イシェは彼を制止しようと口を開いたが、その時、地面が激しく揺れた。崩落が始まったのだ。
「逃げろ！」テルヘルが叫んだ。ラーンとイシェは慌てて後退するも、崩れ落ちる石に挟まれる。イシェは必死に抵抗しながら、ラーンの手を掴もうとした。だが、その瞬間、彼の顔から血が噴き出した。
イシェは絶望的な思いでラーンを見つめた。「ラーン！」彼の目は虚ろになっていた。テルヘルは冷静さを失わず、崩壊する遺跡から脱出しようとした。彼女はヴォルダンの影を感じながら、自分の目的を達成するために生きていくことを誓った。だが、その一方で、余剰な感情が彼女の心に芽生えていた。それはラーンとの友情、そして、彼を失った悲しみだった。
崩れ落ちる遺跡の中に、イシェの叫びが響き渡っていた。