ビレーの朝は早かった。ラーンが寝ぼけ眼をこすりながら起き上がると、イシェがすでに火を起こし、薄暗い焚き火の前で何か煮ている。いつも通り、イシェは眉間に皺を寄せ、何か考え事をしているようだ。
「今日は何やるんだ？」
ラーンの問いかけに、イシェは小さくため息をついた。「テルヘルが新しい遺跡の情報を持ってきた。ヴォルダンとの国境に近い場所らしい。危険度は高いと言っていた」
ラーンは、イシェの言葉に少しだけ興奮した。危険度が高いということは、それだけ価値のある遺物がある可能性もあるということだ。
「よし、行こうぜ！大穴が見つかるかもしれないぞ！」
ラーンの熱意に押されるように、イシェも重い腰を上げた。テルヘルは今日もいつものように、黒曜石のブ brooch を胸元に輝かせながら待っていた。彼女の鋭い瞳が、ラーンとイシェを交互に見据える。
「準備はいいか？」
テルヘルの声は冷たかった。ラーンの体臭が、かすかに彼女に届いた気がした。不快なほどに男臭く、野性的だ。
「ああ、準備はいいぞ！」
ラーンは剣を手に取り、イシェは細身の daggers を確認した。テルヘルは地図を広げ、遺跡の位置を示しながら説明を始めた。
「ここはヴォルダンとエンノル連合の境界付近にある。かつて、ヴォルダンの軍が侵攻した際に激しい戦いが繰り広げられた場所だ。遺物はもちろんのこと、敵兵の亡霊やトラップが残されている可能性もある」
彼らは森を切り抜け、険しい山道を登り、ついに遺跡へとたどり着いた。遺跡は崩れかけており、かつて栄華を極めた様子を伺わせる石柱が、今や朽ち果てようとしている。
「ここだ」
テルヘルが静かに言った。ラーンとイシェは互いに視線を交わし、緊張感を漂わせた。遺跡の奥深くからは、何かの気配を感じさせる。それは、まるで獣の咆哮のように、そして、人間の絶叫のようにも聞こえた。