ラーンの大斧が石壁を叩き割り、埃っぽい空気が充満した遺跡の奥へと繋がる通路が現れた。イシェは眉間に皺を寄せながら、懐中電灯の光を通路の奥へ向け、「またしても行き止まりじゃないだろうな」と呟いた。「大丈夫だ、今回は違う」ラーンは自信満々に笑ったが、その瞳には僅かな不安が宿っていた。彼らはテルヘルに雇われて、この遺跡からある特定の遺物を探していた。
テルヘルはヴォルダンとの戦いで失った故郷を奪還するため、伝説の武器「夜明けの剣」を求めており、その手がかりがこの遺跡にあると信じていたのだ。 ラーンとイシェは当初、単なる日雇いの仕事だと考えていたが、テルヘルの目的を知り、次第に巻き込まれていく感覚を覚えた。
「ここは以前にも来たことがあるはずだ」イシェは地図を広げながら言った。「この壁画…どこかで見たような…」彼女は壁面に描かれた古代の文字を指さした。「これは…伝説の英雄アスタナが戦った場所ではないのか?」
ラーンの顔色が変わった。「まさか…」彼は伝説に記されたアスタナの物語を思い出した。アスタナは、邪悪な王を倒すために夜明けの剣を手に取ったとされる英雄だ。その物語は、子供の頃からラーンの心を躍らせてきた。 しかし、伝説はあくまで伝説で、誰もがアスタナの存在を信じているわけではない。
「もし本当なら…」イシェの目は輝き始めた。「この遺跡には夜明けの剣が眠っている可能性があるのかもしれない」
三人は互いに顔を見合わせた。それぞれの思惑が交錯する中、彼らは伝説に導かれるように、遺跡の奥深くへと足を踏み入れていった。