ビレーの喧騒を背に、ラーンがイシェに声をかけた。「今日はテルヘルさんの依頼だな?あの遺跡、また危険な話らしいぞ」イシェは地図を広げながら「そうね。今回はヴォルダンとの国境近くで、古い伝書に記された場所だと言ってる」と答えた。ラーンの顔色が一瞬曇った。「ヴォルダン…またか。あの国とは関わり合いになりたくないなぁ」
テルヘルが彼らの前に現れた時、いつもより表情が険しかった。「準備はいいな?」彼女の視線は鋭く、二人は無言で頷いた。遺跡の入り口は、深い森の中にひっそりと佇んでいた。巨大な石碑には、不思議な文字が刻まれており、イシェが「古代語…伝書にも似たものだ」と呟いた。
遺跡内部は暗く湿り気があり、足元には落とし穴がいくつも待ち構えているように感じた。「ここは気をつけろよ」ラーンは剣を抜き、イシェは小さなランプの火を灯した。進むにつれて、壁に描かれた奇妙な絵画が目に入ってくる。それはまるで、ヴォルダンの歴史を描いたものだった。イシェは「これは…伝書に記された物語と同じだ…」と声を震わせた。
そしてついに、彼らは巨大な部屋に辿り着いた。中央には、金色の光を放つ球体が浮かんでいた。「これが…!」ラーンが興奮気味に近づこうとした時、突然、床から鋭い棘が突き出した。ラーンは咄嗟に身をかわしたが、イシェはバランスを崩して転倒した。
「イシェ!」ラーンの叫び声は、部屋の奥深くで何かが動き出す音にかき消された。影が彼らに迫り、テルヘルが剣を抜き、その影に向かって立ち向かった。「ヴォルダンか…!お前たちの目的は何だ!?」
影はゆっくりと姿を現し、それは一人の老女だった。「私はこの遺跡を守る者…そして、伝書に記された真実を知っている」老女は静かに言った。「ヴォルダンが世界を滅ぼす計画を進めている…それを阻止するために、あなたたちが必要だ」