ラーンが巨大な石の扉を押さえつけている間に、イシェは息を切らして古い錠前を解いていた。埃っぽい薄暗がりの中、テルヘルが後ろから「急げよ、二人は。あの音聞こえたか？」と囁く。
確かに、奥の方から不気味なざわめきのような音がかすかに聞こえてくる。ラーンは扉を押し続けることに集中し、「少し待てよ、イシェ、開かないぞ！」と声を張り上げた。イシェは額の汗を拭いながら「もう少しだ、もう…」と呟いたその瞬間、石の扉が重々と音を立てて開いてしまった。
目の前に広がるのは、一面に広がる漆黒の空間だった。空気が淀んでいて、息苦しそうな重たさが漂う。ラーンの顔色が少し変わった。「なんか…嫌な予感するぞ…」と彼は呟いた。イシェは小さく頷き、テルヘルが後ろから「さあ、進もう」と促すように言った。
三人は慎重に一歩ずつ奥へと進んでいった。足音だけが響く静寂の中、ラーンの視線は伏し目がちだった。彼が何かを感じ取っているようにも見えた。イシェもまた、背筋がゾッとするような感覚を覚えながら、テルヘルの後ろを歩いた。
その瞬間、床に埋め込まれた石板が突然発光し始めた。不規則な閃光が空間を飛び交い、三人は目を細めた。そして、壁の奥から何者かがゆっくりと姿を現した。