「おい、イシェ!今日は俺が先頭だぞ!」ラーンが陽気に叫び、遺跡の入り口へと駆け込んだ。イシェは溜息をつきながら、彼の後を追った。テルヘルは少し遅れて、二人を鋭い目で追うようにして遺跡の中に入った。
埃っぽい通路を進み、やがて広がる石室にたどり着いた。中央には、古代文明の技術が凝縮された複雑な機械が置かれていた。
「これは…!」ラーンの目を見開いた。「大穴の鍵になるかも!」
テルヘルは冷静に周囲を警戒しながら言った。「触るな、ラーン。まずは状況を確認だ。この機械は何なのか、どんな仕掛けがあるのか…」
イシェは機械に刻まれた複雑な記号を注意深く観察していた。「見たことのない文字だ…もしかしたら、ヴォルダンが探しているものと同じかもしれない」
テルヘルは頷いた。「そうだとすれば、この遺跡はヴォルダンの手によって何かしらの情報が隠されている可能性が高い。我々が先にその情報を入手できれば…」
その時、通路の奥から足音が聞こえた。ラーンが剣を抜き、警戒する。
「誰だ!?」
影の中から、数人の男が現れた。彼らは荒々しい表情で剣を構えており、明らかに敵意を向けていた。
「遺跡の所有権を主張する者たちか…」テルヘルは冷静に状況を判断し、「交渉を試みる価値はある」と判断した。「我々は遺跡調査を目的としている。あなたたちの邪魔はしない。代わりに、この遺跡に関する情報を共有することを提案する」
男たちは互いに顔を見合わせた後、リーダーらしき男が前に出た。「情報か…面白い話だ。だが、我々の目的は情報ではない。お前たちが持つ知識と技術だ。特にあの女…」彼はテルヘルを指さした。「ヴォルダンに恨みを持つ者だと聞いている。お前を仲買人に仕立て上げて、ヴォルダンに近づけようと考えている」
ラーンは激昂した。「何だと!?テメーら、そんなことするつもりか!」
テルヘルは冷静さを保ちながら、男たちに語りかけた。「私の知識と技術が、ヴォルダンにとって価値があるというのは理解できる。しかし、私は決して彼の駒になることはない。もしあなたが真にこの遺跡を手に入れたいなら、私を仲買人として利用するのではなく、共に協力すべきだ」
男たちは互いに議論を始め、最終的にリーダーが口を開いた。「わかった。お前たちと協力する。だが、条件がある。あの機械の謎を解き明かすまでは、我々の指示に従うことだ」