ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑っている。「また大穴だ!今度こそは!」イシェはため息をついた。「ラーンの言う大穴ってのは、いつもと違う意味じゃないのかしら?」
「違うな。今回は本当の大穴だ!あの遺跡の奥深くに眠ってるはずなんだよ」ラーンは目を輝かせた。「テルヘルが教えてくれたんだろ?」イシェはラーンの背後にあるテルヘルを見つめた。彼女は静かに酒を飲んでいたが、鋭い視線で二人を見据えていた。
テルヘルはヴォルダンへの復讐を果たすため、様々な情報を集めていた。遺跡探索の依頼もその一つだ。ラーンとイシェを利用しているつもりはない。だが、彼らには必要不可欠な情報や能力がある。
「よし、準備はいいぞ!」ラーンの声が響き渡った。「イシェ、お前はいつものように慎重に進んでくれよ。俺が先頭切って行くぞ!」
イシェは小さく頷いた。彼女はいつも通り、ラーンの計画の穴を埋める役割を担うことになる。テルヘルは二人を見つめながら、自分の目的を思い出した。そして、彼女の中に渦巻く復讐心と、ラーンとイシェへの複雑な感情が交錯していた。
「さあ、行こう」ラーンの声が響き渡った時、イシェは彼らに背を向けて、一歩後退した。彼女はラーンの後ろにいるテルヘルを見つめた。二人の視線が交差した瞬間、イシェは何かを感じ取った。それは、テルヘルがラーンとイシェを利用していることだけでなく、彼らをある種の「仲立ち」として利用しようとしていることを意味していたのだ。
イシェは深く息を吸い、ラーンの後を追うことに決めた。彼女には、自分の感情や目的を見つける時間が必要だった。