ラーンがいつものように大口を開けて笑っていると、イシェが眉間に皺を寄せた。「また遺跡探検か？ いつになったらその大穴が見つかるんだ？」
「見つかるときに見つかるさ！ きっと今日は何かいいものがある気がする！」
ラーンの楽観的な言葉にイシェはため息をついた。最近、ラーンは特に無計画で、イシェの慎重な意見を聞こうともしない。
そんな時、ビレーに一人の女性がやって来た。テルヘルという名前の彼女は、鋭い眼光と凛とした佇まいで、ラーンたちとは明らかに違う雰囲気を纏っていた。彼女は遺跡探検の経験者で、高額の日当を提示してラーンとイシェを雇うと言い出した。
「私はヴォルダンに復讐するために、ある遺物を探している」
テルヘルの目的は、ラーンたちが理解できるものではなかった。しかし、彼女の真剣な眼差しと高額な報酬に、ラーンの心は揺さぶられた。イシェは不安を感じながらも、ラーンの決意を止められなかった。こうして三人は奇妙な組み合わせの探検隊となり、危険な遺跡へと足を踏み入れた。
遺跡内では罠が仕掛けられており、ラーンの強さとイシェの機転が試された。テルヘルは冷静に状況を分析し、三人を導いていった。しかし、彼女の目的はあくまで遺物であり、ラーンとイシェのことを利用する手段の一つに過ぎなかった。
深部へと進むにつれて、遺跡の空気が重くなり始めた。そこはかつて誰かが暮らしていた痕跡があり、奇妙な儀式が行われていたようだった。壁には古い文字が刻まれており、テルヘルはそれを解読しようと必死になっていた。
「これは...」
テルヘルが呟いた言葉に、ラーンとイシェは息を呑んだ。壁に描かれていたのは、ヴォルダンとの戦いで敗北した国の王の肖像画だった。そしてその下に、ある人物の名前が記されていた。それはテルヘルの名前だった。
「私は...」
テルヘルは言葉を失い、過去を思い出すように目を閉じると、涙がこぼれ落ちた。彼女はヴォルダンに家族を奪われ、復讐を誓うために生き延びてきた。そして、この遺跡には、復讐を果たすための鍵となる遺物が存在したのだ。
ラーンの心は揺れ動いた。テルヘルを助けるべきなのか、それとも自分の夢のために遺跡を探索を続けるべきなのか。イシェもまた、ラーンの葛藤を見つめていた。二人は互いに言葉を交わさず、ただテルヘルの姿を見つめていた。
その時、遺跡の奥から不気味な音が聞こえてきた。それはまるで、誰かが彼らの存在を知り、襲いかかってくるかのようだった。ラーンとイシェは驚き、テルヘルに駆け寄ろうとした。しかし、テルヘルは彼らを制止し、静かに言った。
「私はもう一人ではない」
彼女の言葉には、強い決意と希望が込められていた。そして、それはラーンとイシェの心にも響いた。彼らは、テルヘルの復讐を助けることを決意したのだ。三人は互いに手を握りしめ、遺跡の奥へと進んでいった。彼らの前に待ち受けているものは、真実であり、運命だった。