ビレーの朝焼けが、ラーンの寝顔に影を落とす。イシェはすでに起きていた。小さくため息をつきながら、粗末なテーブルの上で朝食の準備をする。ラーンを起こすのはいつもイシェだ。彼には目覚まし時計も必要ない。なぜなら、彼の体内時計は、太陽の動きに合わせて調整されているからだ。
「おはよう、イシェ。今日はいい天気だな。きっと遺跡から何か面白いものが見つかるよ」
ラーンの笑顔は、まるで太陽の光を浴びたばかりの宝石のように輝いていた。イシェは小さく微笑み返す。彼女はラーンの無邪気さに少しだけ苛立ちを感じながらも、彼の前向きなエネルギーには惹きつけられる。
「うん、きっとね。今日はテルヘルさんが来るんだっけ?あの遺跡は危険だって言ってたわ」
イシェの言葉に、ラーンの顔色が少し曇った。「そうだな。でも、危険なほど面白いものがあるってのも事実だろ?それに、テルヘルさんには感謝してるんだ。あの高額の日当のおかげで、ビレーの酒場を飲み干すこともできるしね!」
ラーンの豪快な笑い声は、小さな部屋に響き渡った。イシェは、彼の無邪気さに少しだけ苛立ちを感じながらも、彼の前向きなエネルギーには惹きつけられる。
「でも、今回は気を付けてね、ラーン。あの遺跡は噂によると、何かが眠っているらしい。そして、それを守る者たちもいるって…」
イシェの言葉は、ラーンの耳に届く前に風に溶け込んでいった。彼は、すでに外に出て、太陽に向かって手を伸ばしていた。彼の体は、まるで太陽の光を吸収し、エネルギーに変換しているようだった。
テルヘルは、いつものように冷静に地図を広げていた。彼女の目は鋭く、そしてどこか悲しげだった。彼女は、ヴォルダンに奪われたものを取り戻すために、あらゆる手段を用いる決意を固めていた。そのために、ラーンとイシェを利用するのもためらわない。
「今日の遺跡は、特に注意が必要だ。そこには、ヴォルダンが欲しがっているものがある可能性が高い」
テルヘルは、重々しい口調で言った。ラーンの無邪気さは、彼女には理解できないものだった。しかし、彼の持つ力と、イシェの冷静な判断力は、彼女の計画にとって不可欠なものだった。
「よし、準備はいいか?では、遺跡へ出発だ」
テルヘルの言葉に、ラーンとイシェは頷いた。彼らは、まだ知らない世界へと足を踏み入れる。そして、その世界は、彼らを大きく変えていくことになる。